今はなき「小田急モノレール」レア技術の塊だった 「向ヶ丘遊園」への足、日本に2例だけのシステム
東洋経済オンライン / 2024年6月7日 6時30分
だが、海外では当時、より近代的な技術を採用したモノレールの研究がすでに進められており、それらが間もなく日本にも輸入されることになる。その1つが、後に東京モノレールに導入された西ドイツ(当時)のアルヴェーグ式モノレールであり、コンクリート製の桁に跨がり(跨座型)、ゴムタイヤで走行する方式である。日本では日立製作所が技術提携した。
これよりやや遅れて日本に入ってきたのが、フランスのサフェージュ式モノレール(懸垂型)であり、パリ地下鉄で実用化済みのゴムタイヤ車両とフランス国鉄が研究試作した振り子車両の理論を応用した設計に特徴があった。サフェージュ式は三菱グループが中心となり、後に湘南モノレール、千葉都市モノレールで実用化されている。
ロッキード式モノレールとは?
そして、最後に登場したロッキード式(跨座型)は、「鉄車輪式」であることが特徴だった。具体的にはコンクリート製の桁の上に、ゴムパッドを介して1本の鋼鉄製のレールを敷き、その上を鋼鉄車輪(防振ゴムが挟み込まれた弾性車輪)の車両が走行するもので、バランスを取るために、上下2カ所の安定輪で側面から軌道を挟み込む機構を備えている。
鉄車輪を使用するメリットとしては、まず、耐荷重性が優れている点が挙げられる(パンクの心配がない)。当時の運輸省の報告書によれば、鉄車輪式はゴムタイヤ式に比べて最大約1.5倍の輸送量となる。また、長距離、高速走行(ロッキード式の諸元表上の最高速度は120km/h)等の面でも有利である。さらに車両構造の面では、アルヴェーグ式は直径の大きなゴムタイヤが客室内に突出して床面がフラットにならず、有効客室面積が狭くなるが、鉄車輪ならばこの問題が解消される。
一方、鉄車輪式の最大のデメリットはゴムタイヤに比べて走行時の騒音が大きい点にあり、都市の街路を通す場合に大きな課題となる。
これらの特徴を総合すると、ロッキード式モノレールは都市内交通よりも、一般の鉄道に近い輸送需要に向いた仕様だったと理解できる。日本ロッキード・モノレールの説明資料にも、以下の一文がある。
「国鉄または私鉄における近郊輸送の行きづまった線区において、例えば、その上下線間に本方式を増設することにより、土地の新規確得(ママ)を最小限にして効果的な輸送力の増強がはかれることになる」
こうした次々と登場する新しいモノレールの技術を見聞するため、私鉄業界は1961年2月25日から2週間の日程で、欧州モノレール視察団を派遣した。団長は小田急の渋谷寛治専務が務め、京阪、名鉄の幹部らが参加し、ドイツのケルン市郊外に建設されたアルヴェーグ式の試験線と、フランスのオルレアン市郊外に建設されたサフェージュ式の試験線を視察している。
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