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"炊飯器と旅する"女性「にぎりびと」の意外な正体 「世の中で一番偉いのは炊飯器」神谷さん(前編)

東洋経済オンライン / 2024年6月8日 7時10分

20年ほど前、東京に大分のアンテナショップができたとき、神谷さんのお母さんである伝承料理研究家の金丸佐佑子さんが食の監修を任されることになり、神谷さんも手伝うようになった。

「そこで東京の料理人さんたちとのつながりができて、みなさんに大分の野菜や食材を紹介するという仕事が始まったんですね。

そのとき気づいたのは、プロの料理人というのは、ご自分たちの食事が後回しになっていることが多いということ。まかないといっても時間がなかったり、しっかりしたものを食べていなかったり。

そこで時々おにぎりをにぎって差し入れするようになったのですが、みなさん、もう泣かんばかりに喜んでくださるんですね」

イタリアンやフレンチの有名シェフたちも、顔をほころばせて神谷さんのおにぎりを頬張ったという。

「おにぎりは人を笑顔にするんだなというのは、このとき実感したことでした」

「おにぎりをにぎること」を仕事にした理由は?

神谷さんに転機が訪れたのは2年前のこと。

嬉野温泉の老舗旅館「和多屋別荘」の「ワーケーション」企画のモニターとなったことがきっかけとなった。

「ワーケーションということで『滞在している間、どんな仕事をしたいですか?』と聞かれたんですね。

そのとき私は『おにぎりをにぎりたいです』と答えました。おにぎりをホテルのスタッフのみなさんに食べてほしいと思ったんですね。

スタッフの方々は、ホスピタリティを提供する立場の方々ですが、そのみなさんにホスピタリティを提供したかったのです。

それで社員食堂でおにぎりをにぎったら、みなさん、ことのほか喜んでくださって。社長さんも含めてスタッフがみんな一緒になって食べて、おにぎりひとつでものすごく盛り上がるんです。

和多屋別荘は2万坪という広大な敷地を有していますから、大工さんなんかも常駐されているわけです。その大工さんも本当に喜んで食べてくれて、『おやつに持っていっていい?』といわれて持ち帰る人もいました」

これが縁となり、厨房スタッフ全員が自主的に休みをそろえ、神谷さんが主宰する台所だけの建物「生活工房 とうがらし」で研修をするなどの交流が始まった。

その様子を見ていた和多屋別荘の社長である小原嘉元氏が「うちでおにぎりをにぎってみてはいかがですか?」と申し出たことが「おにぎり 神谷」のスタートとなった。

日本の食文化を地方から発信する「ライスツーリズム」

「嬉野は古くからの茶どころで、お茶を求めて旅をする『ティーツーリズム』が定着しています。5代続く茶農家であり米農家でもある永尾豊裕園の永尾裕也さんもいるからと、話がトントン拍子に進みました。

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