株価はピークの8割減、優等生「エムスリー」に異変 時価総額はコロナ禍の7兆円から一時1兆円割れ
東洋経済オンライン / 2024年6月8日 7時20分
“コロナ優等生”だったはずの、エムスリーの逆回転が止まらない。
5月30日、国内医師の9割以上が会員登録する医療情報サイト「m3.com」を運営するエムスリーの株価が一時1462円を付け、年初来安値を更新。時価総額はおよそ5年ぶりに1兆円を割り込んだ。
2017年にはフォーブス誌で「世界で最も革新的な成長企業」の1社にも選ばれた医療業界の革命児に、いったい何が起きているのか。
本決算発表後に株価は大幅下落
エムスリーと言えば、コロナ禍での躍進ぶりが記憶に新しい。製薬企業のMR(医薬情報担当者)が医師との面会を制限されたため、m3.com上で医薬品情報を提供するサービス「MR君」や、Web講演会のニーズが伸びた。
市場の期待は一気に膨らみ、2020年の1年間で株価は約3倍に急騰。過去最高値の1万0675円を付けた2021年1月には時価総額が7兆円を突破し、製薬企業の国内最大手である武田薬品工業をも超えたと話題になった。
ところが、当時の熱狂ぶりは今や見る影もない。2021年後半から株価はじりじりと下がり続け、足元ではピークの7分の1に落ち込んでいる。
業績も厳しい。4月26日に発表した2024年3月期決算(国際会計基準)は、売上高が前期比3.5%増の2388億円とわずかに増収を維持した一方、営業利益は同10.6%減の643億円と落ち込んだ。
治験事業を手がけるアメリカ子会社の減損損失を約60億円計上したことに加え、柱であるメディカルプラットフォーム事業が想定以上にふるわなかった。
m3.comの収益は主に、MR君などを通じて医薬品の営業活動を行う製薬企業からの利用料で成り立つ。この製薬企業向けのマーケティング支援を含むメディカルプラットフォーム事業は、高収益で知られる同社の成長の源となってきた。
しかし、同事業の前期実績は、収益性の高い製薬企業向けマーケティング支援が低調だったことで、セグメント利益は6%減の386億円と計画未達に終わった。
屋台骨の失速は今に始まったことではない。コロナ禍が収束に向かうにつれ、製薬業界ではファイザーなどの外資系を中心に、大規模なリストラに踏み切る動きが相次いだ。顧客企業の予算圧縮の余波と、対面営業の復活によるWeb講演会などの需要減少が響いた。
会社側は製薬企業の本質的なDXが進み、同社の提供するサービスの需要は増していくとみて、2023年後半から売り上げが回復すると見込んでいた。だが、ふたを開けてみると回復どころか、前2024年3月期の下期は前年同期の売上高を下回った。
コロナ禍で進んだ顧客企業の“変化”
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