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経済制裁が利かない?懐深いロシア経済のリアル 穏やかな日常生活、制裁でも世界とつながる経済

東洋経済オンライン / 2024年6月8日 8時0分

その後に開始したウクライナ侵攻は、もちろん財政への負担となっている。2022年、2023年と2年連続で連邦財政は赤字(それぞれ対GDP比2.1%、1.9%)となった。2022年の歳出額は対前年比26%もの大幅増であった。

ロシア政府が歳出内訳の公表を取りやめたこともあり、実際に軍事支出がどれだけ増加したのか明確にはわからない。ただし、2024年予算で国防費が対前年比7割増となっていることなどから考えても、軍事支出が大きく増えていることは確実である。

軍需が経済を押し上げている状況は、生産活動にかかる統計データからも推察される。その傾向は2023年にとくに顕著となった。

産業部門別付加価値額の統計において、2022年と比べて最大の伸び率を示したのは「コンピューター、電子・光学機器製造」で31%増であった。

続いて、「金属製品製造(機械・設備を除く)」(対前年比26%増)、「その他輸送用機器製造(注:鉄道車両や航空機などを含む)」(同23%増)、「自動車・二輪車販売・修理」(同21%増)となっている。いずれも軍用品の生産等に大きく関わる産業とみなすことができる。

軍需に支えられた経済成長は今後も続くのだろうか。ロシア政府は以前から毎年3カ年予算を策定してきており、2023年末に2024~2026年の連邦予算を成立させている。

国内債務残高も通常レベル

それによれば、この3年間も赤字財政が継続することとなっている。ただし、赤字幅は圧縮され、それぞれ対GDP比0.9%、0.4%、0.8%である。

ロシアには「国民福祉基金」という名称の基金があり、これが事実上の財政調整基金となっているが、これにはできるだけ頼らず国債発行によって赤字補填を図る計画となっている。

ロシア政府の国内債務残高は2022年以降急増したものの、依然として対GDP比12%程度でしかなく、この数字だけを見れば政府債務の増加を心配するような状況ではまったくない。

対ロシア制裁により外国投資家によるロシア国債の購入は大きく制約を受けるが、国内だけでも十分に消化できるものと考えらえる。究極的には数多くある国営企業等に強制的に国債を引き受けさせることも可能である。

また、状況や目的はまったく異なるものの、日本銀行が多額の国債を保有しているという実態を考えれば、ロシア中銀が一定の役割を果たすスキームも考えうる。

財政赤字規模が現状の見通しよりも拡大したとしても、これらの形でのつじつま合わせも念頭におけば、近い将来に財政破綻が起こる可能性は低そうだ。これまで財政規律を重視してきたことの賜物である。

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