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映画「バティモン5」に映る"移民たちのリアル" 映画撮影の背景について、ラジ・リ監督に聞く

東洋経済オンライン / 2024年6月8日 13時30分

『バティモン5 望まれざる者』©SRAB FILMS-LYLY FILMS-FRANCE 2 CINÉMA-PANACHE PRODUCTIONS-LA COMPAGNIE CINÉMATOGRAPHIQUE –2023

日本政府は在留資格「特定技能」人材を拡充し、2024年度から5年間で82万人の外国人を受け入れることを閣議決定した。

【写真】映画『バティモン5 望まれざる者』のシーン

筆者は行政書士として外国人の在留資格申請手続に関わり、主に建設業や製造業の分野で、人手不足に悩み、切実に外国人人材を欲する経営者たちの声を聞いてきた。一方で、SNSなどでは外国人を排除しようとする論調も少なくない。

そんな今の時代に見ておきたい1本が、2024年5月24日から公開されている、ラジ・リ監督の『バティモン5 望まれざる者』だ。

団地の一角の取り壊しを巡る対立

舞台はパリ郊外の労働者階級の移民家族たちが多く暮らす団地の一角に立つバティモン5。前市長の急逝で、臨時市長となった医師のピエール(アレクシス・マネンティ)は、居住棟エリアの復興と治安改善を政策とし、強硬にバティモン5の取り壊し計画を進める。

しかし、その計画は大家族の貧困層の実態を無視したものであり、住民たちは猛反発。両者の溝が深まる中、移民たちのケアスタッフとして働き、バティモン5に住むアビー(アンタ・ディアウ)は、友人ブラズ(アリストート・ルインドゥラ)と共に住民たちが抱える問題の解決に奔走するが、やがて両者の均衡は崩れ、激しい抗争へと発展していく。

ラジ・リ監督は、『レ・ミゼラブル』(2019年)でカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞し、その名が世界に知られるようになった。

マリにルーツを持つ、ラジ・リ監督は「この物語に描かれている怒りと排除の衝突はフランスの現実である」と語るが、本作で描かれている移民問題は日本の将来とまったく関係がないこととは思えない。

今回は、ラジ・リ監督へのインタビューと、本作公開を記念して5月末に開催されたパリ出身のラッパー、ダースレイダー氏と東京都立西高等学校の生徒たちのトークセッションをヒントに、日本人は外国人とどのようにして向き合うべきなのかを考えてみたい。

本作の舞台である架空の街モンヴィリエのモデルは、ラジ・リ監督が育ったパリ郊外の移民労働者の居住地モンフェルメイユだ。

民間の共同所有物件が多いこの地域は、投資家たちがアパートを大量に買い占め、すぐに売って多額の利益を得ようとしたものの失敗。賃貸に出すことを余儀なくされたあげく、管理費を支払わなかったことから、劣化が急速に進んでいた。

行政はこうした事態に対し、都市再生計画を実施。建物の取り壊し前に住戸を買い取ったが、補償金から未払い管理料が差し引かれたことで、住民たちが受け取る補償金はごくわずかだった。

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