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「トランプ有罪」判決は大統領選に何をもたらすか 「口止め料裁判」ですべての陪審員が有罪の評決

東洋経済オンライン / 2024年6月8日 8時30分

ところが2016年10月、ヒラリー・クリントン候補を相手とする大統領選挙戦の最終盤になって、トランプ氏は「ここで新たなスキャンダルが飛び出したら身の破滅だ」と不安に駆られたらしい。そこでダニエルズさんに対して13万ドルの口止め料を支払い、それを事業記録に弁護士費用だと計上し、選挙費用からねん出した。問われているのは、あくまでも「業務記録の改ざん」であるから、これを「重罪」と呼ぶべきかどうかは、人にとって意見が分かれるところかもしれない。

明らかに重罪と呼ぶべきは、③「1月6日事件」であろう。現職の大統領が選挙結果を覆そうとしたことは、先進国にあるまじき「民主主義への反逆」である。しかも支持者に対して暴力行為を教唆・扇動し、そのことによって連邦議事堂では実際に死者も出ている。この事件の裁判が、最高裁の審理によって遅延している現状はまことに嘆かわしい。

口止め料事件の裁判では、ストーミー・ダニエルズさんが証言に立ったり、トランプさんが「箝口(かんこう)令違反」で9000ドルの罰金を科せられたりと話題には事欠かなかった。

実際に口止め料を支払った元顧問弁護士マイケル・コーエン氏が「トランプ氏の指示だった」と証言すれば、弁護側が「コーエンは史上最大の嘘つき」と主張するなど、ドラマチックでもあった。ただしこの間、法廷に長時間釘付けになり、自分に対する訴えを黙って聞いていなければならなかったトランプさんにとっては、さぞかし難行苦行の時間であったことだろう。

12人の陪審員のバックグラウンドに関しては、報道が過熱気味となっていた。本来は完全匿名で行われるべきところ、内訳が「男性7人、女性5人」であるとか、本職の弁護士が2人含まれているとか、「陪審員長はアイルランド移民の営業職」であるとか、トランプさんのSNSフォロワーが含まれているといったことまで、幅広く報道されていた。

それにしても、わずか2日間で12人の陪審員による意見の完全一致を見たのは、いかなるマジックがあったのか。おそらくは弁護団の作戦ミスだったのであろう。「トランプさんはダニエルズさんと事に及んだわけではなく、支払われた13万ドルは完全に合法的な弁護士費用であった」というストーリーは、さすがに受け入れてもらえなかったようである。

ダニエルズさんの法廷証言によれば、事に及んだ際にトランプさんは彼女に対し、「アダルト・ビジネスでは、男優と女優の取り分はどうなっているのか?」などと尋ねたのだそうだ。いやもう、あまりにもトランプさんらしくて、これが作り話であるとは誰も思えなかったのではないだろうか。

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