"梅クライシス"日本一の産地で収穫量急減のなぜ 南高梅の産地・和歌山県、梅農家が悲鳴
東洋経済オンライン / 2024年6月8日 11時30分
「梅雨」の季節にあたる6月。この時期、梅干しや梅酒、梅シロップづくりなど「梅仕事」を毎年、楽しみにしている人も多いだろう。しかし今年は様子が違う。日本一の「梅の産地」として知られる和歌山県では、過去にない記録的な不作に見舞われているのだ。
【写真】今年は、咲いたばかりの梅の花に雌しべがない!不完全な花の増加が不作に影響か?
梅の産地を襲う異変
梅は古来、「3毒」(食物、水、血液の毒)を断つといわれ、健康食品として重用されてきた。現代でも梅干しは、ジメジメした梅雨の時期に微生物の増殖を抑制し食中毒を防止する「静菌作用」や、胃の粘膜を保護し胃潰瘍などの発生を抑えるなど多くの効用があるとされている。
食生活でコメ離れとともに梅干しの需要は減少傾向にあるが、日本人のソウルフードであることに変わりない。最近は円安の影響で、海外に赴く人の中には自炊のため、梅干しを持参する人も多いと聞く。そのほかにも梅の実は梅ジュース、梅ジャムなどさまざまな商品に用いられている。
このように日本の食文化に深く根付いた梅だが今、主要産地の異常気象で未曾有の危機に直面している。最大産地の和歌山県では、花が咲いても実がつかない「不結実」が多く、せっかく結実した実も3月に降雹(こうひょう)被害を受けてしまった。
【写真】和歌山県みなべ町での青梅栽培・収穫、梅干し加工の様子、雹被害の様子など(7枚)
国内における2023年産の梅の収穫量は、9万5500トン。このうち和歌山県が6万1000トンと全体の64%を占める(近畿農政局)。中でも和歌山県日高郡の南端に位置し、太平洋と紀伊山地に囲まれたみなべ町は日本最大の梅の里である。
江戸時代から引き継がれている山の斜面を使った栽培システムは、山地の保水、ミツバチとの共生、生物多様性の保護などの役割を担う。国連食糧農業機関は2015年、こうした要素を高く評価し「みなべ・田辺の梅システム」を世界農業遺産に認定した。
産出する最高級ブランド南高梅(なんこううめ)は、皮が薄く果肉が分厚いのが特徴であることはよく知られている。スーパーなどでもお馴染みだ。
梅農家は「どうしようかとなっている」
みなべ町にある真造農園代表の真造賢二さん(62)は、今年の梅の作況について「過去に例がないぐらいひどい。年配の方々もこんな年は知らないと言っている」と語る。
真造さんは梅農園を経営して30年ほどになる。大学卒業後、東京で約12年間のサラリーマン生活を経て、地元にUターンした。現在はみなべ町の町議会議員も務めている。
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