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「"宇宙食"としても注目」おにぎりは凄い食べ物だ 炊飯器と旅する「にぎりびと」神谷さん(中編)

東洋経済オンライン / 2024年6月9日 11時30分

前編にも登場したスペインの二つ星レストラン「ムガリッツ(MUGARITZ)」のシェフが来日し、神谷さんのおにぎりを食べたときのこと。

「しきりにご自分の喉を指して、『このおにぎりは喉ごしがいい。湯気が喉を滑っていく感じが非常にすばらしい』とほめてくださいました」

「熱々のおにぎり」のおいしさは、テクノロジーの力で食の可能性を広げる技術である「フードテック」の観点からも注目されているという。

「フードテックを事業の柱の一つとする会社の人たちが、私が拠点とする嬉野温泉和多屋別荘の『おにぎり 神谷』に私のおにぎりを食べに来てくれたんですね。

最先端技術の世界の人たちに私のおにぎりがどう響くか不安もあったけれど、みなさんたいそう喜んでくれて、その後も何度も嬉野におにぎりを食べに来てくださっているんです。

その会社の方がおっしゃるには、『手で持ったときの熱感も将来的にはおいしさの指標になるんじゃないか』ということでした。そういうことにも後押しされて、にぎりたてを手渡しすることにこだわっています」

おにぎりが「寿司」を超えたご馳走になる日

さらに神谷さんのこだわりは、手袋やラップを使わず、「素手」でにぎることにもある。

「昔の姿、原始的なおにぎりのあり方を求めているんです。昔は手袋もラップもなかったですよね。

これもフードテックの会社の方に教えてもらったことですが、人間は皮膚から微量の生体ガス、皮膚ガスを放出しているそうなんです。『汗のにおい』『加齢臭』もそうですし、俗にいう『モテ臭』なんていうのも皮膚ガスの一種だそうです。

そうであればおにぎりの味にも皮膚ガスが作用すると思うんですね」

あるとき、「おにぎり 神谷」に日本人と韓国人の2人の男性が来訪した。

「2人とも『おいしい! おいしい!』を連発して召し上がってくださったのですが、日本人の男性が『なんでこんなにおいしいんだろう。ほかと何が違うんだろう?』とつぶやいたんです。そしたら韓国の男性が『それは手の味だから』とこともなげに答えたんですね。それがすごく印象的でした。

韓国では『ソンマッ』、直訳すると『手の味』という言葉があって、手を使ってキムチをかき混ぜたり、粉をこねたりすることで、それぞれの家庭の味が醸し出されるというのだそうです。日本で言うおふくろの味ですね。

それを聞いて、やっぱり素手でにぎることもおいしさのうちだと確信するようになりました」

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