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「"宇宙食"としても注目」おにぎりは凄い食べ物だ 炊飯器と旅する「にぎりびと」神谷さん(中編)

東洋経済オンライン / 2024年6月9日 11時30分

「皮膚ガス・手の味」がおにぎりの決め手となるのならばと、神谷さんは仕事としてにぎる前日は非常にストイックになるという。

「ジャンクフードやラーメン、焼き肉も食べませんね。『自分がこれを食べたら明日は自信を持ってにぎれないな』というものは食べません。カレーなどスパイスの効いたものも避けます。付き合いで誘われてもお断りします。

それから睡眠もしっかりとります。前の日に不摂生をして寝不足でにぎったら、それはきっとどこかに出ると思うんです。特にプロの料理人、シェフなど、食のプロであればあるほど、見透かされてしまう気がするんですね。

だから食事はごはんと味噌汁と焼き魚にヒジキみたいな粗食になってしまいます。クリーンな状態でにぎりたいんですね」

にぎるときは着物に割烹着と決めているのも神谷さんのこだわりの一つ。

「自分なりにスイッチが入るんですね。日常のおにぎりではない、非日常のおにぎりを食べてもらいたいから。大分の伝承料理研究家であった母は、『日常の食』を研究するために『非日常の台所だけの建物』を建てました。

非日常の格好だからこそ、ありふれたおにぎりにも向き合えると思っています。だからこそおにぎりで寿司を超えたいんです」

伝えたいのは「お米」のすばらしさ!

神谷さんが「おにぎり」にこだわる心底には「ある思い」がある。

「お米って日本人のアイデンティティだと私は思ってるんです。

たとえば今、東京とかでパンを買いに行ったら、300円、400円という値段でも全然普通ですよね。

でも、おにぎりが400円で並んでいたら『高い』と思いませんか? 私にはそれが日本と海外の格差を表しているように思えてならないんです。『ごはん』の扱いがぞんざいになっているんじゃないかと。

日本人であればみんな海外旅行・海外出張などでお米が長期間食べられないとつらいですよね。パックごはんや、それこそ炊飯器を持ち込む人もいるぐらいで。

ごはんというのはそのぐらい日本人の体にしみついている、日本人のDNAに刻まれているものだと思うんです。

歴史をたどれば、昔はお米が『石高(こくだか)』として財力や兵力の指標だったわけです。

であればもっとお米のすばらしさを見直してほしいと思うんですね。そのきっかけになってもらえばいいと思って私はおにぎりをにぎっているんです」

昨今は「糖質制限」流行りだが、ごはんを食べない若い人を見ると悲しくなってくるという。

「『糖質制限』もダイエット・食事法として一理あるのかもしれないけれど、こうやって炊きたてをおにぎりにしてお昼にしっかり食べたら、もう夜までお腹すかないんです。そうしたら、間食にジャンクなものをつままなくていいんです。ごはんをしっかり食べるほうがよほど健康的ではないかと思うんです」

故郷の良さを見直すきっかけに…

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