「低年収の若者」無視した少子化対策が意味ない訳 高年収帯しか子育て世帯が増えていない現実
東洋経済オンライン / 2024年6月9日 12時10分
ここからわかるのは、結婚も子どもも20代の若者、特に男性にとって年収という「お金」の要素が大きく影響しているということです。ちなみに、20代の若者にとっては年収300万~400万円帯がボリューム層であり、ここの年収帯の婚姻が増えていないことが、現代の婚姻減につながっています。
「金がないから若者は結婚できない」という話をするたびに、SNS上では「そんなのは言い訳だ。昔だって金のない若者が結婚していた。そもそも裕福ではないからこそ結婚するメリットがあるのだ」ということを言う人がいるのですが、確かに昔はそうだったでしょう。「一人口は食えねど二人口は食える」という言葉もありました。夫婦二人で住居費や食費を負担すれば、それは一人暮らしするよりは一人当たりの負担も減ることも理屈上はそうでしょう。
しかし、現代は、結婚も子どもを持つことも「まず金がなければ成立しなくなっている」ことも事実なのです。
家計調査から、世帯主29歳までを抽出して、なおかつ1歳までの子どもを持つ世帯の年収分布を2005年と直近の2023年とで比較したグラフが以下です。
全体の世帯数は、婚姻減と出生減で大きく減少しているわけですが、それでも年収750万円以上の世帯では、減っているどころかむしろ増えています。もっとも増加数が大きいのは1000万~1250万円以上の世帯です。
減っているのは年収500万円以下の世帯で、2005年時点ではもっとも世帯数が多かった層です。もちろん、20代の収入が大きく増えたわけではありません。2005年と2023年を比較しても、若者の所得はたいしてあがってはいません。むしろ、高年収層の婚姻は減ってはおらず、かつて日本の婚姻数を支えていた中間層の若者が結婚や出産ができなくなっていることを示唆します。
「貧乏子沢山」はもはや昔話
特に、そのインフレが激しいのが東京23区であり、2022年就業構造基本調査から6年以内に出産をした世帯だけを抽出すると、その世帯年収中央値は1000万円を超えます。東京23区で子どもを産む半分以上が1000万円以上の世帯ということです。
「貧乏子沢山」という時代はもはや昔話であり、今では「金がなければ結婚もできなければ、子どもも持てない」時代へと変容しているのです。
こうした事実の影響を大きく受けるのは男性側であり、それは結婚において男性はその経済力を要求されるという女性の上方婚志向が現在もなお強固に残っているためであることは以前の記事で詳しく解説した通りです(参照→結婚できる高所得層・できない中間層の残酷格差)。
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