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「さらば堅実経営」パワー半導体ロームの乾坤一擲 2025年の世界シェア首位を目指して怒濤の投資

東洋経済オンライン / 2024年6月11日 7時0分

京都に本社を構え、買収を活用しながら生産規模を拡大してきた(記者撮影)

東芝、日立製作所、NEC――。大手総合電機が背負ってきた“日の丸半導体”の凋落を横目に、成長を続けてきた独立系半導体メーカー。今や国内ではパワー半導体の雄となった、そのロームが大勝負に出ている。

【図表】相次ぐ投資が負担となり、営業利益の大幅減を会社は計画する

シリコンサイクルの浮き沈みに翻弄される半導体業界で、ひときわ「堅実経営」が知られてきたローム。自己資本比率は85%前後を誇り、実質無借金を続けてきたが、2021年頃から異変が起きている。

2024年度までの3年間で、ブチ上げた設備投資計画は約4800億円。それ以前の3年間と比べると、およそ3倍となる大増額だ。加えて2023年には、東芝の非公開化への参画に3000億円を拠出。2024年3月末時点で、自己資本比率は65.3%まで下落した。

パワー半導体の「地殻変動」

東芝への3000億円は当初、同社としては異例の大規模な借り入れでまかなったが、今年4月には返済するための転換社債を発行した。行使されれば1株利益の希薄化につながる懸念から同社の株価は急落。1年前には3000円を超えていた株価は、現在は2000円前後で推移している。

なりふり構わぬ異例の投資に突き進む背景にあるのは、パワー半導体市場での生き残りを懸けた「地殻変動」だ。

ロームが強みを持つパワー半導体は、電力の制御や変換などを行う機能を持つ。家電や自動車、産業機械などに幅広く使われ、三菱電機や富士電機など日本企業が世界的に強みを持つ分野だ。

近年、この分野で起こっているのが、急激な「次世代パワー半導体」への需要シフト。半導体を造るための材料そのものが、従来のシリコン(Si)から炭化ケイ素(SiC)へとシフトしている。この地殻変動を受けて、ロームは投資へのアクセルを踏み込んでいる。

SiCはシリコンよりも高い電圧に耐えられ、省電力性にも優れるという特徴を持つ。一方でシリコンより高価なため、市場は限られていた。しかしテスラが自社EVに採用したことでEVへの搭載が加速。これから一段の成長が見込まれている。

現在は欧米のSiCパワー半導体メーカーが先行するが、ロームは「2025年度に世界シェア30%」のトップ企業になることを目標に掲げる。実現に向け、後発ながらも量産能力を確保するために躍起になっているのだ。

まずは2022年に、SiC向けの生産棟を福岡県の筑後工場に新設。当面の生産能力は足りるはずだったが、「建設を決めて以降、SiCパワーの市場規模予測がどんどん大きくなっていった」(ロームのIR担当者)。

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