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カリスマの条件…ファンはなぜスターに興奮? 「オペラ大図鑑」でたどるオペラの壮大な歴史

東洋経済オンライン / 2024年6月12日 18時0分

トップに君臨するディーヴァと呼ばれたいなら、《椿姫》のヴィオレッタや《アイーダ》のタイトルロールで大成功を収めなくてはならない。世界各地でオペラハウスや音楽院が開設される時代にあって、ヴェルディは国際的な聴衆の心に一瞬で届く役の歌をいくつも書いた。プッチーニの感動的なプリマ・ドンナたち、トスカ、マノン・レスコー、蝶々夫人、ミミは、ディーヴァを生み出す役の殿堂に名を連ねるだろう。華やかなチェコのソプラノ、エミー・デスティンは、プッチーニによる悲劇のヒロイン役の名声を世界的規模で高めた初期の歌手の一人だった。

ヴァーグナーのオペラにはかなりのスタミナと独特の声楽技法が必要とされる。論争の的になりがちな「ヴィブラート」(音を細かく震わせるような発声)だが、ヴィブラートのおかげでオーケストラの豊かな音量を超えて声が遠くまで届くのだ。有名なヴァグネリアン・ソプラノのディーヴァ、リリー・レーマンはその草分け的存在で、その後、数世代にわたるジークリンデやブリュンヒルデ歌いの歌手たちに刺激を与え続けた。さらに、リヒャルト・シュトラウスのオペラは、歌唱を20世紀の新たな道筋へ導くような別のタイプのプリマ・ドンナを必要とした。とはいえ、数少ない例外を除いて、現代のディーヴァも現代的オペラの抽象的な役柄より、過去の時代のドラマティックな人物の方を好んでいる。

過去100年にわたって、スター歌手たちはレコーディング・アーティストとしても有名になっている。ドイツのソプラノ、エリーザベト・シュヴァルツコップ、絶対的ディーヴァのマリア・カラス、イタリアのメゾソプラノ、チェチーリア・バルトリ、アメリカのソプラノ、ルネ・フレミングなどがよく知られているが、どんなにすばらしい録音だとしても、オペラハウスでのライヴ上演のわくわくするような感動を捉えることはできない。

テノール

カストラートの衰退以来、有名な男声といえばおもにテノールだ。初期のディーヴォ(この言葉はめったに使われないが)といえば、情熱的でロマンティックな恋人か歴史的な救済者だった。その後現れたのが、ヴァーグナーのヘルデンテノール(直訳すればヒーロー的テノール)で、神話的題材や大編成のオーケストラに向いた力強い声で歌う。1820年代には、イタリアのジョヴァンニ゠バッティスタ・ルビーニが流麗なカストラート的効果のある高音でオペラハウスを驚かせた。1820年代から1830年代にかけてはフランスのテノール歌手アドルフ・ヌリが、とりわけパリ・オペラ座で創唱(初演で歌う)した数知れない役で聴衆を熱狂させ、叫ばせた。

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