生成AIブームの中でアップルが出した「答え」 例年以上に大注目のWWDCで明かされた真実
東洋経済オンライン / 2024年6月12日 7時0分
ちなみにマイクロソフトがCopilot+ PCに搭載するデバイス処理用の小規模言語モデル(SML)「Phi-Silica」は33億パラメーターだが、アップルはその原型となっている38億パラメーターのPhi-3-miniよりも文章生成において良い成績を挙げているという。
これだけでも、自社の持つ強みをうまく使っているが、4つあると書いた残りの2つもライバルが追従しにくい要素だ。
クラウドAIレベルのサービスを無料で提供
3つ目の違いは、クラウドに接続しながらもプライバシーを守るというiPhoneの理念と同じアプローチが言語モデルの中でも徹底されていることにある。 プライベートクラウドという技術を用いると、ユーザーはそれと意識する必要なく、デバイス内でのAI処理で不足する内容の処理を、アップルが設置するデータセンター内で動作するAIプロセッサーで実行させる。いわゆるクラウドAIである。
デバイス内の処理とプライベートクラウドへの拡張はシームレスに行われ、ユーザーはいっさいそこに関与する必要はない。プライバシーデータはクラウドで処理を行ったとしても漏れることがないように設計されている。
データセンター内で実行される大規模言語モデルのパラメーター数は発表されていないが、その性能はGPT-3.5-Turboなどと遜色ない性能を、より高いエネルギー効率で実現しているという。
では、どのようにしてプライベートクラウドを機能させるのだろうか?
プライベートクラウドの詳細は極めて複雑だが、ここでは可能な限りシンプルに説明することにしよう。
クラウドでの処理が必要な場合でも、デバイス上のAIによって送信する情報を細分化して送り、その結果をデバイス内で再構築する。例えば「娘の演劇を観に行くには何時に出発する必要があるか?」という前出の質問では、必要なスケジュール情報や位置情報を送信するが、その前に匿名化され、IPアドレスもたどれなくなる。
最後4つ目の違いは、サーバーを用いたクラウドAI規模のサービスを無料で提供できることだ。米ビッグテックの中で唯一、本業がハードウェア販売にあることも一因だが、自社開発のAIプロセッサーで構成するクラウドを運用するデータセンターが省電力設計で、それを100パーセント再生可能エネルギーで賄っている。デバイスとAI処理を分業することで負荷も下げることができ、結果として自社ハードウェアに内蔵する無料の機能として一体化できた。
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