フランス「極右首相」は生まれるか、何が起きるか 危機感に賭けたマクロン大統領の勝算とリスク
東洋経済オンライン / 2024年6月12日 9時30分
6月6~9日に欧州連合(EU)の加盟各国で行われた欧州議会選挙では、極右勢力が議席を伸ばしたが、中道右派会派が最大会派の座を死守し、他の親EU会派と協力して議会運営を行う可能性が高い。欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長も2期目の続投に前進した。
【写真で見る】極右政党・国民連合のバルデラ党首は28歳。党勢を拡大する原動力となっている
その意味で今回の選挙がEUの政策運営に与える影響は限定的だが、極右勢力の躍進を受けて主流会派の政策の中心軸が右傾化することや、国内政局への波紋が懸念される。
なかでもフランスでは、大統領支持会派が極右政党に大敗したことを受け、マクロン大統領が国民議会(下院)の解散・総選挙を決断し、国内外に衝撃が広がっている。もし極右政党が第一党となれば、マクロン大統領は極右政党から首相を選ばざるを得なくなる恐れがある。
2024年の世界的な選挙イヤーに新たな不安要素が加わった。
移民増加と生活困窮が招いた極右躍進
欧州各国で極右勢力が躍進している背景には、厳しい市民生活と移民の流入増加に対する国民の不満がある。
過去数年の欧州経済は、歴史的な物価高やインフレ抑制を目指した金融引き締めなどで、景気の低迷が続いている。エネルギー価格や食料品価格の高騰は市民生活を直撃してきた。
また、2022年にEUに新たに流入した移民は約700万人と、過去10年余りの300万~400万人程度から急増した。2023年にEU域内で庇護申請を行った難民希望者は、2015~2016年の難民危機時以来の100万人を突破。ウクライナからの逃避民に加えて、中東や北アフリカなどからの移民や難民希望者が欧州に殺到している。
財政負担の増加や治安悪化への警戒が広がるなか、極右勢力は移民規制の厳格化、国民の負担増につながる気候変動対策の見直しなどを掲げ、支持を拡大している。
さらにフランスでは、今回の欧州議会選はマクロン施政に対する信任投票という色彩も帯びていた。
マクロン大統領は就任以来、国際社会やEU運営で強いリーダーシップを発揮する一方、国内では時に強硬手段を使って改革を断行し、「傲慢で国民の声に耳を傾けない」との批判に晒されてきた。
マクロン陣営は今回の欧州議会選挙を「欧州の未来を占う選挙」と位置づけたが、野党勢は「マクロン大統領への審判の場」と位置づけ、争点化することに成功した。
「追い込まれるより今」と総選挙に踏み切った
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