ニューオータニ「400年の歴史」持つ絶品の鴨料理 昭和天皇も口にした一品から辿るホテルの歴史
東洋経済オンライン / 2024年6月13日 14時0分
近世フランス王朝の優雅さを漂わせる、シックな濃紺に彩られたエントランス。中に入ると、まるでフランス貴族の邸宅を訪れたかのような空間が広がる――。
「銀の塔」を意味するホテルニューオータニ「トゥールダルジャン 東京」(東京・千代田区)は、2024年に40周年の節目を迎えた。
本店はフランス・セーヌ川のほとりにある「トゥールダルジャン」。1582年の創業で、400年もの歴史を誇る、ヨーロッパの中でも最古のレストランの1つだ。
昭和天皇も味わった鴨料理
名物は何といっても鴨料理で、フランス本店では昭和天皇が皇太子のころに召し上がられたこともある。
なかでも「幼鴨のロースト マルコポーロ」は、なんと完成までに18カ月を要したとされる一品だ。丁寧にローストした鴨の上に、ダックプレスで抽出した鴨のエッセンスと、厳選した4種の胡椒を使用したスパイシーかつクリーミーで、上質なソースがかけられており、豊かな味わいが口の中に広がる。
またトゥールダルジャン 東京には1000種類以上の銘醸フランスワインが取り揃えられており、日本のソムリエ界を率いる数々のソムリエも輩出してきた。
これほどのグランメゾンが、なぜ東京のホテルニューオータニ内に、お店を構えることになったのだろうか。
ホテルニューオータニが開業したのは、1964年9月1日のこと。創業者は大谷米太郎氏だ。
その3男である米一氏は、米太郎氏から社長業を引き継いだ後、インターナショナルレストランの先駆的存在でもある「トレーダーヴィックス 東京」をホテル内に開業させた。
そんななか、米一氏は飛行機のなかで偶然、トゥールダルジャンの2代目オーナーのクロード・テライユ氏と出会うこととなる。米一氏はもともとフランスのアートコレクターであり、フランス文化に関心を抱いていたことから、2人の会話は大いに弾んだようだ。
2人はホテルニューオータニ内でトゥールダルジャンの開業を計画するものの、今から40年前の日本で本格的なグランメゾンを開業すること自体容易ではない。そこでキーパーソンとなったのが、クロード氏と既知の仲であり、現在トゥールダルジャン日本代表総支配人を務めるクリスチャン・ボラー氏だ。
「25歳のときに、日本でオープンするレストランをみてくれないかと打診されました。飲食業界のことはわかりませんでしたが、料理やワインは大好きでした。まだ日本語はできませんでしたが、日本に非常に興味をもっていました。当初は2年間の滞在という話だったので、日本とフランスの懸け橋になれたらと思い、受けることにしました」(ボラー氏)
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