何光年も離れた「恒星への旅」は実現可能なのか NASAの専門家が本気で考えた星間旅行の課題
東洋経済オンライン / 2024年6月14日 14時0分
民間企業による宇宙飛行が実施されるなど、宇宙はかつてないほど身近になっている。しかし、太陽系を離れた恒星への旅についてはどうだろうか? 私たちはいつか、遠い星まで出かけ、そこに住むことも可能になるのだろうか?
今回、NASAのテクノロジストである物理学者が、光子ロケットや静電セイル、反物質駆動、ワープ航法など、太陽系外の恒星への旅の可能性について本気で考察した『人類は宇宙のどこまで旅できるのか:これからの「遠い恒星への旅」の科学とテクノロジー』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
太陽系外惑星を探査する日
人類は、地球上に出現して以来、夜空の星を見つめては大いなる疑問を問いかけてきた。「私は誰なんだろう?」、「私はどうしてここにいるんだろう?」、「むこうには誰がいるんだろう?」などのように。
【写真を見る】NASAテクノロジストの物理学者が本気で考えた宇宙トラベルガイド
人類が宇宙の探査を続け、太陽系外の恒星に向かう最初の一歩を踏み出す準備をしつつある今、これらの疑問のいくつかに答えられる日も近づいている。星は、ただの夜空に輝く美しい点ではない。遠い彼方の星には新しい世界がある。
1990年代の初頭になるまでは、宇宙に存在すると(科学的に)わかっていた惑星は太陽を周回するものだけだったというのは今では信じがたい。
ますます多くの太陽系外惑星が知られるようになり、なかには主星のハビタブルゾーン〔訳注 恒星系で、主星である恒星からの距離が生物にとって適切な領域。生命居住可能領域〕に存在するらしいものも見つかって、人類がそんな系外惑星を訪れて探査する日が来るかもしれないと考える人も増えてきた。
宇宙時代の幕開け直後の1960年代ごろの楽観的な見方とは裏腹に、この目標に向かう人類の進歩は多くの人の予想よりも常に遅かった。その理由は、努力が足りなかったことだけではない。乗り越えるべき課題がどれも非常に困難なのだ。
最も近い恒星、プロキシマ・ケンタウリは、約4.2光年離れている。つまり、秒速約30万キロメートルで進む光が4年以上かけてやっと辿り着く距離にある。だが、こんなふうに距離を説明されても、ほとんどの人はピンとこないだろう。
光の速度を実感できる人などそうはいない。この距離を頭のなかで捉えるのがどんなに難しいかわかっていただくために、もっと近い距離について、それだけ進むのがどれだけ大変かを想像してみよう。
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