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「40年遺骨収集続ける男」から考える"弔いの意味" 『骨を掘る男』の奥間勝也監督にインタビュー

東洋経済オンライン / 2024年6月14日 12時40分

沖縄戦の映像は、多くのメディアが使用してきたものですが、実は「1フィート運動の会」という沖縄の人たちがアメリカからあの映像を買って使っている、といった背景があります。

あれ以外に戦争中の記録映像がなく、沖縄戦を視覚化するため、アメリカから奪い返すような気持ちで、お金を集めて映像を買い取る運動が、1980年代にあったのです。

戦時中の映像を客席で見ている僕の背中を画面の中に入れたのは、沖縄戦の映像がアメリカの視点で撮られたものだということを指摘したかったから。それと同時に、僕自身は沖縄の視点で映画を作りたいという想いも込めました。

――遺骨を探しながら、ぼそぼそと話す具志堅さんの手元を映した映像も、印象に残りました。暗闇で手元をアップしたのには、もちろん狙いがあるんですよね。

あの場所で撮るというのは、実は技術的にも、とても難しくて。ガマの中は、狭くて三脚も置けない。足場が悪く、カメラを手元に寄せようとするとブレてしまう。撮影していて、いつ、あっ!(遺骨が出てきました)と具志堅さんが言うかもわからないので、カメラをどこで止めていいのかもわからなくなりました。

――骨は小さい欠片が多いのに、具志堅さんは、これは「腕のこの部分だ」などと言い当てていくんですね。

具志堅さんの頭の中には、骨の図が入っているんだと思います。僕も最初、具志堅さんがこれは「何々の骨だ」とすぐに言うので、なんでわかるんですか? と聞いていました。

――「これは乳歯だね」と手にする場面があります。乳歯の配列図を出して、照らし合わせていましたよね。

あれは具志堅さんがポケットに入れているものです。でも、歯ぐらいですね。そういうふうに骨の図を常備していたのは。

プライベートな部分が出てこない

『骨を掘る男』が、観る者に鮮烈な印象を与えるのは、具志堅さんが何者なのか、説明がされないままに、映画が進行していくことだ。テレビのドキュメンタリーでは、彼は何年、どこに生まれて、などとナレーションが入るものだが、本作では具志堅さんが骨を掘る姿をじっくり見せていく。これがミステリータッチで飽きさせないのだ。

━━私は具志堅さんのことを、この映画で初めて知ったのですが、映画ではプライベートな生活シーンが一切ないことで、逆に具志堅さんに対して強い興味を抱きました。

プライベートな部分も、撮影はしていたのです。例えば、慰霊の日(6月23日)に向けた看板を、具志堅さんが自宅の駐車場で作っているところとか。これは、DNA鑑定をして、遺骨を遺族のもとに返そうということを訴える看板でした。編集過程で落としましたが、当初は入れていたんですよね。

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