もし、SNSが「ある/ない」時代に学生期を送ったら Z世代と非Z世代とでつくられた「Z社会」の構造
東洋経済オンライン / 2024年6月14日 10時0分
若者と接する場面では、「なぜそんな行動をとるのか」「なぜそんな受け取り方をするのか」など理解しがたいことが多々起きる。
企業組織を研究する経営学者の舟津昌平氏は、新刊『Z世代化する社会』の中で、それは単に若者が悪いとかおかしいという問題ではなく、もっと違う原因――たとえば入社までを過ごす学校や大学の在り方、就活や会社をはじめビジネスの在り方、そして社会の在り方が影響した結果であると主張する。
本記事では、広島修道大学商学部准教授の中園宏幸氏が、Z世代がはじめてSNSの存在が当たり前となった世代であるという観点から、『Z世代化する社会』のレビューをお届けする。
「いま」の学生がわれわれと異なる点
高校生の頃を、あるいは大学生の頃を、少し思い出してみてください。楽しかったこと、苦しかったこと、どうにもならなかったこと、それぞれあったと思います。そして次に考えてみてほしいのは、そのときどうしたのかについてです。
その当時と、「いま」とでは何が異なるでしょうか。経済状況、国際関係、技術水準、物価などと変化していることがいくつか思い浮かぶはずです。ここで注目したいのは、コミュニケーションにかかわるものとして普及しきったインターネットです。『Z世代化する社会』にて指摘されていたところでいえば、多様なソーシャルメディアの台頭や、特徴的な主体として「インフルエンサー」が登場しています。これらは間違いなくインターネットの産物といえるでしょう。
Facebook、Instagram、TikTok、X、BeReal.などは、「いま」では欠かせないSNSを含めたソーシャルメディアです。「いま」でこそ当たり前に存在するサービス群ですが、わたしやあなたが高校生・大学生だったときにはほとんどが存在しなかったのだと思います。「つぶやく」ことはあれど、「ポスト」することはなかったのです。
ソーシャルメディアには、自分の世界を拡げるという側面があると同時に、世界が見えすぎてしまうという側面もあります。そのため、自分の学生期にソーシャルメディアがあってほしかったと思う方もいれば、そのようなものがなくて本当によかったと思う方もいらっしゃるでしょう。
前者ではたとえば、自分の好きな趣味について現実世界では話せる相手がいないけれども、ソーシャルメディアでは多くの同志と語り合えるということがあります。まさに現実世界では閉じていたものが、ソーシャルメディアのチカラによって開かれて新たなコミュニケーションを生み出すわけです。ひと昔前の「オタク」という存在はまさにそれでした。
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