精神科医が「自分が病みそうになった時」の対処法 発した言葉が意図せず患者を傷つけることも…
東洋経済オンライン / 2024年6月14日 18時0分
自分の言葉が人を傷つけるかもしれない、傷つけたかもしれないという距離にいつづければ、まあ病んでしまうだろう。え、病まないですかね。分からないが、少なくとも私は病んでしまう。なので、病みそうになったら一度撤退するというか、「直面化して考えさせないといけない場面だったよね」などと、こちらの立場を正当化することで、それでよしとしてしまう。白衣を着るのである。
距離をとって考えてみることで楽になり、逆に次の展開を考えやすくなったり、視界が開けたりすることはありうる。こうした態度は “メンタル”が崩壊しないように自らを守る知恵であり、まず精神科医が最初に身につけるべきだということを思い出した。
現実を「受け止めすぎない」
しかしやはりこうした知恵のなかには、自分の白衣は絶対に脱げないという否認があり、でろでろに白衣もスクラブも脱げて上裸になりながら「患者さんのパーソナリティの問題で診察の継続が困難になりました」と述べているような現状がないかは、よくよく自分に問わないといけない。
改めて、現場で重要なのは、着たり脱いだりのジャケットダンス。それをできれば意図的にしてみる、ないしは無意識に行った直後に気づいていく、ということだと思う。
本稿を含む公開された文章はすべて患者さんが読む可能性があり、そして傷つく可能性がある。じゃあ書籍など書かなければいいわけだが、書いてしまうのは社会に必要な書籍だからというよりは、書籍を書きたいという欲が自分にあるからである。
つまり欲によって自らを公開し、患者さんを傷つけている、ということがあり得ているわけで、とんでもないわけだが、その現実を受け止めすぎるともう私は本など書けないわけで、それは嫌なのでなんとなくこのことを曖昧にしているというところもあるだろう。
それでいい、とする態度をとることで私の心は急速に楽になるが、100%それでいいわけではもちろんない。それは知っていて、でも公開してしまうようなずるい側面があるということを自分で理解しながら、そういう存在であることに罪悪感も抱きながら、診療も続けていきたいと、世界に甘えてしばらくは生きていきたい。
尾久 守侑:精神科医、詩人
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
世界最高峰の心臓外科医が留学後に受けた「屈辱」 「白い巨塔」にはびこっていた"排除の力"とは
東洋経済オンライン / 2024年6月23日 19時0分
-
精神科医も悩む「患者本人が望まない入院」の問題 必要であっても日常的な罪悪感を抱えている
東洋経済オンライン / 2024年6月20日 17時0分
-
精神科医が「高校生の患者」にする質問の中身 心理的な葛藤が体の症状に出ている場合には…
東洋経済オンライン / 2024年6月17日 19時0分
-
国内では「猟奇的」と非難された…「世界初の内視鏡心臓手術」を実現した医師が日本の医療界に言いたいこと
プレジデントオンライン / 2024年6月14日 8時15分
-
ダメな医師ほど患者の話を聞かない…心臓手術の名医が「勉強熱心な患者を迷惑がる医師は三流」というワケ
プレジデントオンライン / 2024年6月13日 8時15分
ランキング
-
1初めての刺青は「中学時代」。離婚3回、4児のシングルマザーがたどり着いた“幸せ”の境地
日刊SPA! / 2024年6月28日 8時54分
-
2おしゃれな部屋作りで大事な4つの基本、知ってる?インテリアのコツをFUDGEが解説
fudge.jp / 2024年6月27日 19時30分
-
3低価格の「非純正バッテリー」に注意 火災で“建物全焼”の事例も NITEが注意喚起
オトナンサー / 2024年6月27日 22時10分
-
4コバエ駆除は「ハエの種類によって対策を変える」必要アリ!プロに聞いた方法とは?
女子SPA! / 2024年6月27日 8時46分
-
5エナドリを「1日1リットル」飲んだ私に起きた異変 「心臓を針で一突きすれば、身体全体が破裂する…」
東洋経済オンライン / 2024年6月27日 13時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)