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「読者の7割ばあちゃん」福岡の新聞ヒットの裏側 75歳以上が働く「うきはの宝」のリアルに迫る

東洋経済オンライン / 2024年6月14日 7時0分

うきはの宝の代表・大熊さんと働くおばあちゃんたち。撮影するとき、「笑ってください」とお願いする必要はない。いつも自然な笑顔なのだから(筆者撮影)

おばあちゃんに人気の『ばあちゃん新聞』、おばあちゃんの愛情たっぷりの食品ブランド「ばあちゃん飯」、お悩み相談からダンス、料理まで幅広く届けるYouTubeチャンネル「ユーチュー婆」――。

【写真を見る】おばあちゃんが取材に行くこともある「ばあちゃん新聞」。現在は毎月3000部を発行

福岡県うきは市の過疎地域に、75歳以上のおばあちゃんたちがいきいきと働く会社がある。その名も「うきはの宝」だ。

高齢化が進む過疎地にユニークな会社が誕生

初夏のある昼下がりに、元保育園を活用した同社の拠点を訪ねると、おばあちゃんスタッフ2人と代表の大熊充さんが、キッチンでワイワイと作業を進めていた。途中、近所の女性がおしゃべりに来るなど、オープンであたたかい雰囲気だ。

國武トキエさん(77歳)は、同社ができた2019年からアルバイトとして働いている。うきは市で生まれ育ち、自宅で田舎体験や農業体験を受け入れてきた。

大熊さんに手伝ってと声をかけられて、「私が近所のおばあちゃんたちに習ったような田舎料理を、次の世代に伝えられることがうれしくてやりがいがある」と明るく話す。内山ケイ子さん(82歳)は1年ほど前に仲間になった。「ここには素敵な先輩がたくさんいらっしゃるから、皆さんとコミュニケーションを取れるようになったことが一番うれしい」と声を弾ませる。

大熊さんとは5年の付き合いになるトキエさんが「大熊さんがあれしよう、次はこれしようと次々と新しいことを持ってきてね。でも、みんな自分にできることなら、ちゃんとやってるのよ。新しいことをするのは面白いから」と言うと、大熊さんは「ほら、スタンフォード大の教授のケンさんが、適度なストレスは健康にいいって言ってたでしょ」と応じる。

ケイ子さんが「好きだからできるのよ」と続けると、トキエさんは「この年になると、そのときそのときを精いっぱい楽しめればいいと私は思うの。大熊さんに対して、私たちも思ったことは何でもパーッと言うから、ストレスはないわ」とおおらかに笑った。

うきはの宝の代表の大熊さんは、2019年に39歳でこの会社を設立して、次々と新たな仕掛けを展開してきた。

農林水産省「INACOMEビジネスコンテスト」最優秀賞などを受賞し、数々のメディアでも紹介され、スタンフォード大学の教授が研究・取材に来たこともある。しかし「いやあ、自分としては成功にまだまだ遠くて……。人生をかけて頑張ります」と自らを鼓舞する。

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