ダウン症児を虐待、私の愚行から考える偏見の真因 不寛容な日本社会の根底にあるのは「無知」
東洋経済オンライン / 2024年6月16日 12時0分
そう、偏見は<無知>から生まれている。
障がい者への差別は、障がいについて教えようとしない、教える能力すら身につけてこようとしなかった大人たちの責任である。この大人には、当然、私も含まれている。
子どもにとって、障がいのある人は<未知>の人だ。だが、私たちが、彼女ら/彼らに、学びのチャンスさえ与えれば、障がいのある人の生きづらさは<既知>に変わる。
一方、私たち大人が、障がいのある人たちのことを知ろうとせず、子どもたちに語るべき言葉を持てないのは、たんなる<無知>の仕業である。この<無知>こそが偏見を生み、差別へと子どもを導く。
社会支出に占める障がい者向け給付の割合を見てみよう。日本のそれはOECDに加盟した38の国のなかで30位。主要先進国では最低レベルである。
障がい者は数でいえばマイノリティだ。だからこそ、少数者に対する扱いをみれば、その国の人たちの寛容さがわかる。日本は明らかに不寛容な社会である。
私たちは、経済力や防衛力、スポーツの勝ち負けを競いあう。それなのに、少数者へのやさしさを競いあおうとはしない。なぜなのだろうか。
私たちは自己責任を重んじる社会を生きている。生活保障が貧弱な政府を作り、自助努力、自らの責任で生きていくことの価値を重んじてきた。
勤労の美徳という言葉がある。みなさんもご存じのように、勤勉に働き、自己責任で生きていくことは、道徳的に優れた人間の条件である。
これは、生産性のある/なしが、人間の有用性ばかりか、道徳性をも左右することを意味している。生産性のない人、すなわち働けない人たちは、自己責任で生きたくても生きられない人たちなのに、あたかも社会のお荷物であるかのごとく語られる。
人間とは「総合的な生き物である」
私たちは子どもたちに教育の機会を与える。だが、教育は「人間」を生産的で、経済の役に立つ「労働者」に作りかえるための道具ではない。
理論でもいい。論理でもいい。教育は「理(ことわり)」にしたがう。運悪く生産性がなかった、それだけの理由で障がい者を不当に扱う。それは「理不尽」であり「不条理」である。そのように「理」から外れぬよう、教え諭すのが教育の役割である。
「人間とは総合的な生き物である」
これは恩師である神野直彦先生の大切な教えの1つだ。
私たちには、できることもあれば、できないこともある。彼女ら/彼らもまた、同じであり、私よりも優れている点だってもちろんある。私自身、障がいのある人と共に生きることの愉しさをもっと、もっと、知りたかった、そう強く思う。
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