爆増する「ロピア」にも負けないスーパーの正体 従来スーパーが切り捨てた生鮮ノウハウを強化
東洋経済オンライン / 2024年6月16日 13時0分
バローデスティネーション・ストアは、このタチヤのノウハウでできた生鮮売り場とバローのチェーンインフラを活用して調達したコスパの高い工業製品群(日配、グロサリーなど)が合体しており、鮮度と安さの両立により地域の同業との差別化を実現した。
わかりやすいのが、鮮魚売り場で丸魚を大量に並べて、昔の魚屋さながらの接客販売を行い、セールストークに引き込まれた来店客が次々に調理加工を頼んでいく。そこに、店内DJであおりを掛けると、さらに人が群がる。生鮮目当てで来店した客は、せっかく来たので生鮮以外の商品もひと揃え買って帰るため、従来店よりかなり売り上げが増えるようだ。
生鮮部門にかかる労力とコストは増えるのだが、それ以上に売り上げ貢献が大きいため、結果、収益が増える、といった仕組みである。
名古屋に鳴り物入りで乗り込んだロピアとの激突
この戦略転換によって、バローは本格的な再成長モードに入ったことはデータにも表れ始めている。バローの全社ベースの設備投資は、2016年頃からデスティネーション・ストアへの転換のために、既存店改装投資が増加しており、2021年3月期に新店投資を上回った後もほぼ同程度で推移している。バローの並々ならぬデスティネーション・ストア転換への意欲の現れであろう。
そして、この投資が進んでいくと、2020年3月期まで右肩下がり傾向であった売り場効率(売り場面積あたり売り上げ)が急回復をみせる。その頃から、微減傾向だった既存店売上、客数増減率がプラスへと転じてきた。コロナによる巣ごもり特需もあったのだろうが、その後失速していないのだから本物とみた。
そして、結果として、営業収益を伸ばしつつ、漸減傾向だった営業利益率は上昇トレンドになった。バローのデスティネーション・ストア改装はまだまだ途上であるが、それはこの会社のさらなる成長余力を意味している。
名古屋に鳴り物入りで乗り込んだロピアと、名古屋の生鮮王タチヤがプロデュースするバローデスティネーション・ストアが激突すれば、地域のスーパー業界にも大きな刺激となるに違いない。
従来のスーパーが切り捨ててきたノウハウ
食品スーパーのオペレーションは、チェーンストア理論をベースとしているため、店舗の標準化、マニュアル化などにより、オペレーションを単純化することで、非正規雇用比率を上げて運営コストを下げて収益を確保する、という考え方が一般的である。
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