爆増する「ロピア」にも負けないスーパーの正体 従来スーパーが切り捨てた生鮮ノウハウを強化
東洋経済オンライン / 2024年6月16日 13時0分
この戦略は、組織化されていない個人商店などからシェアを奪って成長するためには、極めて有効であったため、食品流通においてもチェーンストアが勝ち残り、主流を占めるようになった。本来、生鮮品という足の速い商品に関しては、現場でのきめ細かい管理ノウハウ(ロスを極小化して売り切るノウハウ)が重要だが、チェーンとしての全体最適のため、スーパーにおいては切り捨ててきた。
こうした時代の流れを受けて、かつての生鮮専門店が持っていたノウハウは、個人商店の衰退と共に絶滅寸前にまで追い込まれていた。
しかし、生鮮専門店の中には生鮮管理ノウハウをスーパーのチェーンオペレーションとは異なる仕組みで多店舗化する企業もいた。それが肉のユータカラヤ(ロピアの前身)であり、タチヤ(青果店出自)であり、角上魚類(大規模鮮魚チェーン)などであり、こうした専門店チェーンにおいて、きめ細かい生鮮管理ノウハウを多店舗展開できる企業も現れるようになった。
こうした企業の中から、自らがスーパーとして展開したり、アライアンスによりスーパーと合体することで、新たなイノベーションを起こすものも現れた。それが、ロピアであり、バローデスティネーション・ストアなのであろう。
生鮮強化型チェーンストアの手法が突破口を開く
チェーンストア同士の同質化競争に陥りつつある今、チェーンオペレーションに加えて、生鮮管理ノウハウを駆使した売り場作りをすることが、大きな差別化要因となる。人口減少で市場が縮小していく環境下、チェーンストアによる同質化が進んだ今こそ、こうした生鮮強化型チェーンストアの手法が突破口を開くひとつの解となるはずである。
唐突だが、この話を書いていて、昔、生物の授業で習った「ミトコンドリア」のことが頭に浮かんだ。動物などが動くためのエネルギーは、細胞内に存在するミトコンドリアが作り出しているのだが、このミトコンドリア、元々は別種の好気性細菌だったのに、捕食されたか何かのタイミングで、細胞が取り込んで共生している、という関係らしい。
異物を取り込んで消化してしまうのではなく、共生ができれば、さらに発展するという過程がなんとも不思議なのだが、生物の歴史の中では割とよく起こっているのだという。生鮮専門店を取り込んで(どっちが主体かはさておき)、上手に共生するスーパーは、きっと次のステージに進化できる、そんな気がするのである。
中井 彰人:流通アナリスト
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