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精神科医が「高校生の患者」にする質問の中身 心理的な葛藤が体の症状に出ている場合には…

東洋経済オンライン / 2024年6月17日 19時0分

相手が思春期の患者なら大抵話題にすることとは?(写真:Fast&Slow/PIXTA)

精神科医でありながら、詩壇の芥川賞とも呼ばれるH氏賞受賞の詩人としても活躍する尾久守侑先生。

そんな尾久先生による、ユーモラスで大まじめな臨床エッセイ『倫理的なサイコパス:ある精神科医の思索』より一部抜粋・編集し、3回にわたって掲載します。

第2回は、「思春期の患者への接し方」についてのお話です。

高校生の診察で

私はふだん精神科医として病院勤務をしている。一方で、週に1回は、内科外来で内科診療をしている。そこには普通の下痢や咳や腹痛の人などが次々にやってくるが、なかには15歳を超えて小児科の手を離れた思春期の患者もやってくる。どこまでを思春期とするかにはいろいろあるが、ここでは高校生を想定する。

そのさい私は、大抵SNSのことを話題にする。どんなSNSをどんなふうに使っているかということを尋ねるわけだが、当然これは最近の若者の風潮に興味を持って好奇心から聞いているわけではなく、診療情報として聴取している。

といっても、インフルエンザや急性虫垂炎(“盲腸”)の思春期患者にはSNSをどう使っているかを尋ねることはまずない。喉やお腹が痛い人にSNSの使い方を聞くのは変だし、診療の参考にならないからである。SNSの使い方を尋ねるのは、心理的な葛藤が身体の症状として出現していると見立てた患者に対してだけである。

「心理的な葛藤が身体の症状として出現する」とは一体どういうことか。例えば、学校に行く時間なのに身体が怠すぎてまったく動けないとか、登校中にめまいとふらつきがひどくて学校に行けないとか、特定の授業が近づくと動悸発作が起こって保健室に行かざるを得なくなるとか、そういうことをいう。もちろん実際に何か内科疾患であったりすることはゼロではないわけだが、大抵は、何らかの言語化できない心理的葛藤が身体症状として表出されているわけである。つまりここでは「学校行きたくない」と身体が述べている。

「なんとなくの平均値」とのズレをみる

さて、SNSについての問診が、思春期診療においてどういう効果があるのか考えてみると、一つには、「なんとなくのタイプ」が分かる。ということが挙げられる。この「なんとなくのタイプ」というのは、「なんとなくの平均値」からの偏倚(へんい)によって推し量られる。

例えば私の考える内科外来を身体化した症状で受診する中高生のSNS使用における「なんとなくの平均値」は、InstagramとTwitterは匿名で登録はしているが見る専門、Facebookはやっていない、TikTokもやっていない、YouTubeは結構みている、みたいな感じである。

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