1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

富士急が買収「西武の遊覧船」小田急にどう対抗? 2人の人気鉄道デザイナーが芦ノ湖で「競演」

東洋経済オンライン / 2024年6月17日 7時30分

船内だけではなく、外に出ても「見張り台」が8カ所もあり、「映画『タイタニック』で、船首で腕を広げて風を感じるシーンを再現できます」(水戸岡氏)。インスタ映えする場所をたくさん作ろうという狙いがある。建造費は12億5000万円。従来の海賊船の建造費をおよそ2億円上回った。

富士急の買収で「遊船」テコ入れ

これに対して、西武グループは2004年の有価証券報告書虚偽記載問題に端を発した上場廃止もあり資金調達がままならず、設備投資を抑えてきた。そのため1980年代に製造した船舶がほぼそのまま使われていた。窓は大きいとはいえ、客室には国鉄時代を思わせる座席が無機質に並んでいた。

状況が変わったのは2023年3月。富士急行が西武グループの遊覧船事業を買収し、箱根遊船として運営を始めたのだ。富士急は河口湖をはじめとした富士山の周辺で事業展開を行っており、富士山の眺望が売り物となっている箱根への進出は悲願ともいえた。その箱根進出をアピールするためにインパクトのあるものを創りたい。そして実行に移したのが、船舶のリニューアルであった。

富士急が新たな遊覧船「SORAKAZE(そらかぜ)」のデザイナーに指名したのは建築家の川西康之氏。「WEST EXPRESS(ウエストエクスプレス)銀河」「やくも」「雪月花」など鉄道車両のデザインで知られるが、瀬戸内海を走る観光型クルーザー「SEA SPICA(シースピカ)」や世界初の次世代内航電気推進タンカー「あさひ」など船舶デザインの実績も豊富である。

そらかぜの製造のベースとなった船舶は1985年竣工の「はこね丸」。これをどのように改造するか。「富士急らしい船を造ろう。では、海賊船とは違う富士急らしさとは何か」。川西氏のデザインはこの問いかけから始まった。

富士急は鉄道事業を営むが、事業の主力は富士急ハイランドを中核とするレジャー・サービス業だ。そこで思い至ったのが、富士急ハイランドは森を切り開いて造ったのではなく、溶岩の台地に土を入れ、木を植え、緑豊かな遊園地にしたという事実。「そうだ。自然、緑をテーマにしよう」。

そしてできあがったコンセプトが「芦ノ湖に浮かぶ緑の公園」である。船の甲板を緑あふれる公園にするという大胆なアイデア。これなら海賊船との差別化も図ることができる。

甲板には天然の芝生が

甲板には芝生を育成し、船尾には蔦を生やした。普通の人が思い浮かべる遊覧船のイメージとは明らかに異なる驚きのコンセプトだ。それだけに、実現までには紆余曲折があった。芝生については天然芝と人工芝のどちらを採用するか。天然芝は手入れの手間がかかるし、人工芝は紫外線による劣化でダメージを受けると、繊維が雨で流れたり風で飛ばされたりして湖に流れ出てしまう。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください