一生を宇宙船で過ごす人々が直面する問題とは? 何世代も続く「遠い恒星への旅」の倫理と哲学
東洋経済オンライン / 2024年6月18日 16時0分
民間企業による宇宙飛行が実施されるなど、宇宙はかつてないほど身近になっている。しかし、太陽系を離れた恒星への旅についてはどうだろうか? 私たちはいつか、遠い星まで出かけ、そこに住むことも可能になるのだろうか?
今回、NASAのテクノロジストである物理学者が、光子ロケットや静電セイル、反物質駆動、ワープ航法など、太陽系外の恒星への旅の可能性について本気で考察した『人類は宇宙のどこまで旅できるのか:これからの「遠い恒星への旅」の科学とテクノロジー』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
宇宙船での暮らしがもたらす心理的影響
遠い恒星という目的地までの飛行中、大勢の旅行者たちが生活する1つの世界となるワールドシップ宇宙船での船内生活について、心理学・社会学・政治科学に基づく社会科学的な議論や、その倫理と哲学について考えてみよう。
【写真を見る】NASAテクノロジストの物理学者が本気で考えた宇宙トラベルガイド
限られた人数の孤立した集団で、宇宙旅行しながら長期間過ごすという特殊な状況の心理的影響を理解するためには、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する(最長1年間連続で)宇宙飛行士たちが活動したこの20年間でNASAが収集したデータを参照すればいいじゃないかと思われるかもしれない。
NASAはこのほか、3年もかかる火星往復旅行が乗組員に及ぼす心理的影響を推測する研究にも出資している。このデータは、重要なのは間違いないが、乗組員はたった5名というISSに比べ、大人数が乗り込むワールドシップにはあまり当てはまらないだろう。
この件に関して、海軍を参考にしようとする人が多い。海軍では、NASAのミッションよりもはるかに大勢の人員が、ほぼ自律的に活動する船のなかの密な居住空間に置かれて、連続で何カ月も、ほかの人間から隔離されて過ごす。乗員が6000人を超えるアメリカ海軍空母なら、乗員が1万人を超えるはずのワールドシップに最も近いと言えるだろう。
ワールドシップは海を行くのではないし、隔離は残りの生涯続くが、海軍の多くの若者たちにとっては、連続1年以上世間から離れて海上生活するのは、まるで一生そうしているかのように感じられるかもしれない。
このテーマに関する文献が宇宙旅行とは無関係なさまざまな専門誌に掲載されているが、ワールドシップの設計者が設計の過程でそれらのものをよく調べなければならないのは間違いない。
生涯を船上で暮らす人々の文化
この記事に関連するニュース
-
遠い恒星へと旅するのに必要な驚愕のエネルギー 光速の50%を超える速度で飛行するとしたら
東洋経済オンライン / 2024年6月27日 15時0分
-
人類が遠い惑星に住むための独創的なアイデア どうすれば人間が居住可能な世界にできるのか
東洋経済オンライン / 2024年6月24日 15時0分
-
宇宙旅行で「低重力」が人体に与える深刻な影響 生命を維持するための「星間宇宙船」の設計
東洋経済オンライン / 2024年6月21日 15時20分
-
何光年も離れた「恒星への旅」は実現可能なのか NASAの専門家が本気で考えた星間旅行の課題
東洋経済オンライン / 2024年6月14日 14時0分
-
“ワープドライブ”が実現する日が来るかも? 新研究が示唆することとは
sorae.jp / 2024年6月4日 10時37分
ランキング
-
1Q. 納豆をより健康的に食べるには、どのような食べ合わせがおすすめですか? 【管理栄養士が解説】
オールアバウト / 2024年7月2日 20時45分
-
2藤井聡太“八冠再独占”への道 最大の難関は伊藤匠・新叡王への挑戦権獲得、トーナメントでの4連勝が必須
NEWSポストセブン / 2024年7月3日 7時15分
-
3"ホワイト化"する企業で急増中…産業医が聞いた過剰なストレスを抱えてメンタル不調に陥る中間管理職の悲鳴
プレジデントオンライン / 2024年7月3日 9時15分
-
418÷0=?物議を醸した小3の宿題に東大生が反応。「教員の力不足」「思考力を磨く良問」などの声
日刊SPA! / 2024年6月30日 15時52分
-
5洗濯用洗剤、計量せず詰め替えパウチから注ぐ人がいるって本当!? メーカー「目分量はNG、原液こぼすと洗濯機が傷むことも」
まいどなニュース / 2024年7月1日 11時44分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)