「働くことの解像度」を上げる「プロレス的思考法」 相手がいてこそ私たちは「闘う」ことができる
東洋経済オンライン / 2024年6月19日 14時30分
奈良県東吉野村への移住実践者で、人文系私設図書館「ルチャ・リブロ」主催者の青木真兵氏が、このほど新刊『武器としての土着思考:僕たちが「資本の原理」から逃れて「移住との格闘」に希望を見出した理由』を上梓した。誰かとの比較でしか自分の価値が測れなくなっている現代の問題点と、そこから脱する思考法を青木氏が考察する。
たかが働く、されど働く
僕たちは資本の原理に支配され、商品に囲まれ、自らも労働力を商品として提供する社会に生きています。
そんな生活を送っているあまり、誰かとの比較でしか自分の価値が測れなくなっていることを、新刊『武器としての土着思考』では問題視しています。だから雇用契約が更新されなかったり、病気で仕事を辞めざるを得なかったり、就職活動に失敗したりすると、生きている意味がなくなったと思ってしまう。こんな社会が生きやすいわけはありません。
本書において「働くこと」は、労働力を市場に提供するだけの話であり、自分の生きる意味や価値とはまったく関係がないことを主張しています。と同時に、やはり現代社会で生きていくうえではお金が必要だったり、働くこと自体はしんどくても、ノルマを達成したり、同僚と愚痴を言い合いながら酒を飲んでいる時こそ、心から楽しい時間を過ごせていると思えたりする。たかが働く、されど働く。こんなふうに「働くことの解像度」が上がれば、仕事を続けるか辞めるか、ゼロかイチか生きるか死ぬかという、白黒思考から脱せられるのではないでしょうか。
「働くことの解像度」を上げるために必要なのが、生きることを自分一人で引き受けないことだと思っています。どうしても、自分の生活費を自分で稼ぐことが自立であり、大人であるという言説が広まっていますが、本当にそうでしょうか。というか、この時の「自分」とは何なのでしょうか。
家族や友人に囲まれ、うれしい時も悲しい時も話を聞いてもらったり、反対に話を聞いたりしているのも「自分」です。そういう家族や友人がおらず、社会制度や社会資源によって生きているのも「自分」です。「自分」を孤立した単一の個人としてだけ見るのではなく、関係性のなかで理解すること。この思考法こそ、僕が本書で述べている土着思考の重要な一つのキーワードです。
本当の意味での「プロレス的思考」
そしてなぜこのような思考法が「武器」となるのか。もしかしたら、みなさんが考えている「武器」とは意味が異なるかもしれません。「はじめに」には以下のように記しています。
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