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「働くことの解像度」を上げる「プロレス的思考法」 相手がいてこそ私たちは「闘う」ことができる

東洋経済オンライン / 2024年6月19日 14時30分

また、仮に自給自足の生活を送っていたとしても、山や川、海などの生き物を獲ったり、植物を採取していることは、「一人」ではないと考えています。

僕たちは有限性の中で生きている

「人は一人では生きていけない」という事実を認めることは、僕たちが有限の世界に生きているということを理解することでもあります。本書でもそれは繰り返し述べられています。本文では、内田樹『街場の天皇論』を踏まえて、有限性の中で生きていく仕方を僕は「山村デモクラシー」と呼んでいます。

無限に基づく社会デザインは、これから先は通用しないでしょう。無限に基づくということは、青天井の経済成長を意味します。しかしそれは自然を制圧するテクノロジーだったり、人力では及ばない工業的な道具を使わないと達成できません。確かにテクノロジーの力をもってすれば、山も平らにできるし、海も埋め立てることができる。地中深くにトンネルを通して、東京と大阪をすさまじいスピードで結ぶことも可能となります。

でもそうした悪い意味でのゼロベースというか、シミュレーションゲームのマスのように世界は真っ平らであるはずはありません。そこには必ず森や山があり、地下水が流れ、人が住んできた歴史があります。もちろん人以外の動植物もたくさん暮らしている。それらすべてをなかったものにして、一からつくりたいものをつくることのできる力を人間は持っています。しかしそういう力を誇示する仕草が「人類の夢を叶える」ことだという考えこそ、僕は限界が来ていると思っています。

その土地の歴史、植生などを考慮したうえで、みんなで意見を出し合い、何ができるのかを生態圏の中で考える。それが土着であり、天皇という言葉で示したものと折り合いをつけた社会をつくる、政治的成熟です。僕はこの状態を有限性を含んだ民主主義という意味で、「山村デモクラシー」と呼んでいます。

本書でお伝えしたい土着思考とは、生きることを関係性、有限性の中で捉え直すことだといえます。今あるものをどう使い、どう楽しく生きていくのか。本書がそんなことを考えるきっかけになっていただけたら、うれしく思います。

青木 真兵:「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」キュレーター、古代地中海史研究者、社会福祉士

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