多忙な人が気づくべき「怠けてはいけない」のウソ 思い込まされている価値観は本当に正しいのか
東洋経済オンライン / 2024年6月19日 17時0分
オーバーワークの常態化、燃え尽き症候群・うつ病、スマホ疲れ・SNS疲れ、格差の拡大と競争社会の激化……。日常的に疲労を感じる人が増える中、アメリカの社会心理学者デヴォン・プライス氏は「そんなに働かなくていい」「むしろ怠惰であるほうがいい」と語ります。しかし多くの人は「怠ける」ことに後ろめたさを感じるのではないでしょうか。デヴォン・プライス氏の著書『「怠惰」なんて存在しない 終わりなき生産性競争から抜け出すための幸福論』から一部を抜粋し、お届けします。
「働き蜂」のように動き回った
生産性の高い人だ、と私は褒められてきた。
周りからは、いつも「働き蜂」みたいに動き回っている、勤勉なしっかり者に見えていただろう。けれど、その代償は大きかった。
仕事で業績を上げ、執筆活動や社会運動にも熱心に取り組み、周囲の期待に応えられるよう、いつもバランスを取ってきた。締切を破ったことはなかったし、行くと言ったイベントには必ず顔を出した。
就職活動中の友人がいれば応募書類の推敲を手伝い、人権侵害について議員に連絡する人には精神面のサポートをした。
そうやって「活動的で頼りになる人」という外面を保ってきたけれど、私の内面はボロボロだった。本を読む気力もないほど疲れ果て、刺激を避けて暗い部屋で独りで過ごした。頼みを断れず抱え込んだのは自分なのに、頼ってきた相手を恨んだりもした。
活動範囲を広げすぎてちぎれそうになっても、身体を引きずってタスクを次々と片付けていた。エネルギー不足で動けなくなって「怠惰」になる自分は許せなかったのだ。
私のような人は多い。
「上司の期待を裏切れない」といつも残業を引き受けて長時間労働をしている人。友達やパートナー、家族の相談相手やお世話係として24時間いつでも頼られている人。さまざまな社会問題に関心があっても時間が足りなくて、活動に満足に参加できず罪悪感を持っている人。
こういうタイプの人は、起きている時間すべてをアクティブな活動で埋めようとする。長時間労働のあとにスマートフォンのアプリでスペイン語学習をする、オンライン学習サイトでプログラミング習得を目指す、などだ。
こういう、私のようなタイプの人は、「価値ある人間として認めてほしいなら、やるべきだ」と社会に教え込まれたことを全部やろうとする。責任感をもって仕事を頑張り、社会問題に熱心に取り組み、友人を思いやり、絶えず学び続ける。将来が不安なのだ。
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