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多忙な人が気づくべき「怠けてはいけない」のウソ 思い込まされている価値観は本当に正しいのか

東洋経済オンライン / 2024年6月19日 17時0分

相手の期待より早くメールを返信して、「すごい! 仕事が早いね」と言ってもらうのが快感だった。頑張り屋で仕事のできる人だと思われたくて、自分がうまく回せる以上の仕事を引き受けた。

そうやって、次々にタスクを自分で抱え込んでいれば、破綻するのは時間の問題だ。体調を崩すかメンタルをやられてしまう。

「怠惰のウソ」に気づいた

実際、私は過労で体調を崩した。それでも不調を隠して働き続けた。過労のせいで心身が完全に壊れるまで、方向転換の仕方がわからなかったのだ。体調は元に戻らず、医師に診てもらっても原因は特定できない。

どんな検査も治療も役に立たず、医師にも治せなかった謎の病気に苦しめられた末、ようやく治療法が見つかった。休養だ。何もしない、純粋な休養が私には必要だったのだ。

それから2カ月、徹底して非生産的に過ごした。そのうち徐々に、心身にエネルギーが戻ってきた。

改めて見渡せば燃え尽き、体調不良、仕事を抱えすぎた人が周囲にたくさんいる。それでようやく気づいた。私が苦しんでいたのは、社会全体に蔓延した流行病だったのだ。これを私は「怠惰のウソ」と呼んでいる。

「怠惰のウソ」は深く文化に根ざした価値体系で、次のことを私たちに信じ込ませている。

●表向きはどうあれ、本質的に自分は怠惰で無価値だ。
●怠惰な自分を克服するために、いつも一生懸命頑張らなくてはいけない。
●自分の価値は生産性で決まる。
●仕事は人生の中心だ。
●途中でやめてしまうこと、頑張らないことは、不道徳だ。

「自分は頑張りが足りていない」と罪悪感が湧くのは「怠惰のウソ」が原因だ。身体を壊すまで働きすぎるのも、「怠惰のウソ」に突き動かされているからだ。

身の回りの「怠惰のウソ」に気づき始めた私は、研究者としてのスキルを活かして、「怠惰の歴史」を掘り下げ、最新の心理学研究を渉猟して生産性について調べた。

その結果に、私は安堵しながら、落胆してもいた。生産性や燃え尽き症候群、メンタルヘルスに関する研究によると、平均的な労働時間は長すぎるらしい。

全日制大学の標準的なカリキュラムや、社会運動の週当たりの分担など、一般に正常とされているタスク量は多すぎて、大半の人には継続不可能だという。

しかも、「怠惰」だと見なされている行為は、実際には、自己防衛本能の強い表れなのだという。

やる気が出ない、目標が定まらない、といった「怠惰」な状態になるのは、心や身体が安静や静謐(せいひつ)を求めて悲鳴を上げているからだ。疲労がたまっているときには、心身の訴えを聞き、その声を尊重して、ようやく回復へと向かえる。

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