多忙な人が気づくべき「怠けてはいけない」のウソ 思い込まされている価値観は本当に正しいのか
東洋経済オンライン / 2024年6月19日 17時0分
だから、先手を打って準備しておく。自力でコントロールできることは全部制御して、不安を軽減しようとする。そうして自分を追い込んで、頑張りすぎるのだ。
どれだけ頑張っても終わりがない日々
それでいつも疲れ果て、焦りを感じ、全然できていない自分に失望している。いくら業績を上げても、どれだけ頑張っても、もう十分できたと満足できず、片時も心は休まらない。私なんてまだ休んでいい立場じゃないと思い込んでいる。
燃え尽きかけたり、ストレスから体調を崩しそうになったり、何週も睡眠不足が続いても、自分で「もう無理だ」と諦めたら「怠惰」になってしまう。「怠惰」はいつだって悪いことだから避けなくては、と信じ続けている。
この世界観が、私たちの人生を蝕んでいく。
何年も、私はひどい生活パターンで生きてきた。朝から5〜6時間、休憩も取らずに働いて、片っ端から業務を処理していく。
この時間帯は、メールの返信やレポートの採点に猛烈に集中していて、軽食をつまむどころか、席を立って少し歩くのも、トイレに行くのも忘れていた。誰かの邪魔が入れば、イライラしながら相手を睨みつける。こうして5時間ほど過ぎた頃には、空腹とイライラと精神的消耗でもう動けない。
こんなふうに超生産的でいられるのはいい気分だった。前日の夜に考えて不安になっていた「やることリスト」のタスクを全部片付けられる自分が好きだった。そう思うと短距離走のように全力で凄まじい量の業務を処理できた。
怠惰な時間を過ごしたあとの「罪悪感」
だけど、そんな働き方をしていると、その後、使い物にならなくなる。午後は生産性ゼロに等しい状態で、SNSを何時間もただ眺めているだけだった。終業後はベッドに倒れ込む。暗い部屋でポテトチップスを食べながらネット動画を見る以外のエネルギーは残っていない。
こうして数時間、「充電」をすると今度は、時間を有意義に使えなかった罪悪感が押し寄せてくる。
「友達と出かければよかったのに」「なんで執筆しなかったんだろう」「どうせなら健康的で素敵な晩ごはんを作ればよかった」ー。
そうして、翌日にやるべきことを考えてストレスに襲われる。そしてまた翌朝になると、罪悪感から働きすぎて疲弊、というサイクルが始まるわけだ。
これが身体によくないのは当時もわかっていたけれど、抜け出せずにいた。たとえ疲労感がひどくても、大量のタスクを短時間で完了する快感は手放せなかった。私は「やることリスト」に完了のチェックを入れるために生きているようだった。
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