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芸人を開花させる「脱力タイムズ」の凄い作られ方 制作陣が語る「誰も見たことがない笑い」の裏側

東洋経済オンライン / 2024年6月21日 15時50分

あまり『脱力』を見たことがない人には、かつてない笑いと聞いてもピンと来ないだろう。具体的には、たとえばこんなケースだ。

2020年に放送された回のエンディング。フジテレビの小澤陽子アナウンサーが突如、タイムスケジュール的にこの番組に出るのがつらいのだが、会社に言っても辞めさせてくれない、辞めさせてください、と切々と話し出す。すると、それを聞いた、ゲストのケンドーコバヤシ氏が大爆笑する。

実は、その少し前、ケンドーコバヤシ氏が出演するラジオ番組でレギュラーを務めていた女性タレントが、生放送中に同様の発言を行い、騒動に発展したことがあった。もはや誰も触れないタブーのようになっていた話を、あえて『脱力』では大胆にも掘り返して、うまくパロディ化して笑いに変えてしまったりする。

芸人はそれぞれ「この人はこのネタ、このパターンでウケてきた」という笑いのテンプレートを持っていたりする。だが、有田氏はその得意パターンをあえて“破壊”し、未知の切り口で笑いを作り出そうとする。その挑戦によって、その芸人の誰も見たことがない一面が引き出されたり、新たな能力、魅力が開花したりするのだ。

例えばぺこぱの松陰寺太勇氏がゲストに登場した回では、“人を傷つけないツッコミ”を得意にしている彼が今まであまり見たことがないブラックな一面を引き出され、思わぬ笑いが生まれていた。

そして特徴的なのは、番組上は、有田氏自身はスタジオ中央に座り淡々とキャスターを務めているだけということ。彼の脳内で生まれた「新しい笑い」が実現するのを静かに見守るように。

「有田さんが台本から関わり、笑いを構想しているけれど、本番の映像では自分自身が表に立って笑いを取る形にはしていない。自分を出すのではなく自分の色でいかに芸人さんや俳優さんを面白く作れるのかというアシストに徹しているんです。もし自分が出ていくところがあっても、それは笑いのフリでしかなくて、そのために自分が犠牲になるんです。この部分は『脱力』で一番見てほしい部分です」(ラリータ氏)

「出川哲朗さんがゲストの回で『有田、お前どこまで考えてるんだ!』と言ったことがあって。収録してから放送を見ると、想像を超えてくることがいっぱいあって、『有田さん、これどこまで(先が)見えていたんだろう』と」(寺田氏)

「有田さんは、芸人さんが本気にならざるをえないボケやトラブルといったネタを本番中にぶっこんだりする。それに驚いて、テンションも上がって、新しい能力が引き出されているのかなと思います」(カツオ氏)

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