氷河期で「バイト先の塾に就職した男」が見た地獄 ある団塊ジュニアがたどった苦節のキャリア人生
東洋経済オンライン / 2024年6月21日 12時0分
1971~1974年に生まれ、現在、働き盛り真っただ中の49~53歳の「団塊ジュニア世代」。その数800万人、現役世代の中で人口ボリュームとして突出した層が今、大きな「岐路」に立たされています。
連載4回目は、当時はあまり一般的ではなかった「第二新卒」の壁に苦しめられたものの、老舗のレジャー産業企業で幹部に上り詰めた49歳男性のケースを取り上げます。
バイト先だった大手学習塾に就職
「いま苦境にいる同世代の人たちも、諦めずに頑張れば必ず再起できるはずです。私のような凡人でもできたので、前を向いてゆきたいということをお伝えしたいんです」
埼玉県内のカフェで筆者を迎えてくれた吉岡進さん(49歳、仮名)は、開口一番こう語りだした。物腰が柔らかく、ソフトな物言い。接客業界で積み重ねた経験を踏まえながら、およそ四半世紀前の苦しみを語ってくれた。
「年齢的には、浪人生と同じでしたので、会社では“浪人経験のある新卒”くらいの扱いをされるとばかり思っていました。ところが、そんなことはありませんでした。当時の日本社会は、新卒至上主義だったからです。新卒で躓くと、こんなにも厳しくなるのかと思い知らされました」
吉岡さんが就職したのは、大手学習塾。都内にある中堅私立大学1年のときから、アルバイト講師として週5日教壇に立ち、中学生に英語と社会を教えた。正社員講師と同じくらい、多くの生徒を志望校に送り込んだという自負があった。教え続けるうち、生徒たちが物事の本質をつかみかけた瞬間に見せる目の輝きにとりつかれた。志望校合格に至った生徒の親からも指導が評価され、大いに感謝された。
「一応、公務員を志望していましたが、就職活動をしていた大学4年の1996年は、氷河期が始まりかけており、就職難でした。地元市役所の採用試験にも、東大生や旧帝国大出身者が大量に押し寄せてきました。倍率は数十倍にも上り、当然ながら、不合格です。でも、生徒が成長していく様子に魅せられ、最後は塾に就職すればいいと安易に考えていました」
塾側に相談すると、大歓迎され、正社員で就職した。ところが、すぐに行き詰まった。バイトと正社員では、働く環境がまったく異なっていたのだ。
時給2000円のバイト時代は、多い月で20万円以上稼いでいた。鉄道好きなため、全国各地を旅行した。割烹に出入りし、回転寿司ではなく、カウンターのある寿司屋を好む大学生だった。あくまでも、大学生バイトは、塾にとって大事な「ゲスト」のようだった。
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