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新しい産直?ハマグリの産地「Amazon」の正しさ 「AIの進化」は私たちや社会に何をもたらすのか

東洋経済オンライン / 2024年6月21日 20時0分

テクノロジーは私たち人間の価値観をどう変えていくのでしょうか(写真:久保嘉範)

AIの進化は私たちに何をもたらし、社会をどう変革していくのか。その答えを探るべく、日本の情報工学をリードする第一線の研究者で、師弟の間柄でもある暦本純一さんと落合陽一さんが「AI時代の知性」をテーマに語った。

本稿では、その対談をまとめた著書『2035年の人間の条件』からの抜粋で、テクノロジーが私たち人間の価値観をどう変えていくのかを紹介する。

人工改変された自然を愛でる日本人

──人間とコンピュータの境目が曖昧になると同時に、自然とコンピュータとの関係性も変わっていくのでしょうか。

落合:自然については、民藝運動の主唱者である柳宗悦(やなぎむねよし)※1が昔こんなことを語っているんですよ。

〈ここに美しい写真があるとしよう。諸君よ、諸君はその写真以上に美しく自然を見る事は殆ど不可能なのである。美しい写真は、与えられた自然よりずっと美しい。そこ迄達しない写真はまだ充分に美しくはない。私達は美しい写真を通して自然を美しく見る事を教わるのである。〉

(「美しい写真とは何か」『柳宗悦全集』第二十二巻所収、筑摩書房)
*原文を現代仮名遣いに改めた。

この「美しい写真は、与えられた自然よりずっと美しい」という言葉が僕は好きなんです。写真が「美しい自然」を生むための道具だとすれば、チャットGPTもそれに近いかもしれない。新しい道具を通して「美しい自然」が見えたりするので。

※1 柳宗悦(1889 ─ 1961) 美術評論家、宗教哲学者。大正末期より民藝美論を立て、調査や収集のために日本全国と海外各地を旅した。雑誌『工藝』『民藝』を創刊し、東京駒場に日本民藝館を創設するなど、民藝運動の普及に努めた。それまで注目されることのなかった民衆の工芸の美を解明した功績は大きい。著作に『雑器の美』『日本の民藝』など。

暦本:自然はどんなに美しくてもアートではないからね。自然は自然であって、その美しさが解釈されないとアートにはならない。

落合:そうですね。いったん人間という変換器があいだに入ることで自然がアートになる。ただ日本人は、限りなく自然に近いけど自然じゃないものをアートにしようと頑張ってきたんですけどね。たとえば「庭」とか。

庭は、自然をいったん分解して再構築したものだから、本来の自然とは違います。でも、そこに本来の自然に通じる心を感じ取る。里山もそう。里山を見て「自然は美しい」と感じる人が多いけど、あれは人工改変された自然の代表みたいなものですよね。

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