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気づかぬうちに陥る「現代の情報弱者」とは誰か 「だまされる人が愚か」だと言い切れない事情

東洋経済オンライン / 2024年6月21日 10時30分

もはや「嘘と真実の境界線」があいまいな世界で(写真:miyuki ogura/PIXTA)

現代は、人をだますことがかつてないほど容易な時代。

そして人は誰しも、多少なりともやすやすとだまされてしまう性質を秘めている。毎日といっていいほど報道される特殊詐欺のニュースは決して他人事ではないのだ。

世界でベストセラーになった『全員“カモ”』は、「だましの手口」のケーススタディをふんだん挙げつつ、この時代に「人々はいかにだまされるのか」を体系的に考察した書。

今、もっとも詐欺のカモになりやすいのは、どのようなタイプなのか。

人間の「だまされやすい性質」を克服するにはどうしたらいいのか。

本書をもとに、ジャーナリストであり作家としても活動する佐々木俊尚氏に聞いた。

「起こらなかったこと」に目を向ける重要性

時代を問わず、ステレオタイプ的なものの見方をする人はたくさんいます。特にX(旧ツイッター)などを見ていると、いわゆる大衆の感情や思考の傾向がよくわかる。本書には、大衆がどういう認知の歪みに陥りやすく、いかにして詐欺の手のうちに落ちてしまうのかという考察と事例が多く載っており、日ごろSNSをウォッチしている身としても「たしかに」と首肯するところが多くありました。

【写真を見る】「見えないゴリラ実験」で有名な著者の最新作

たとえば本書には、「洪水を防ぐための予防策は成功しても称賛されないが、堤防が決壊すると市民の怒りを買う」という話が出てきます。「何らかの行動によって悪いことが起きるのを防いだとき、私たちはめったに覚えていない」、ゆえに「起こらなかったことに目を向けること」の重要性を指摘しているのですが、そこで思い出されたのは、反ワク派――つまり新型コロナウイルスのワクチンに反対していた人たちです。 

ワクチンが開発され、世界中で10億人以上に接種されたことで、パンデミックはようやく収束に向かいました。ところが、そういう話をXにポストすると、必ずといって「私はワクチンを打っていないけど一度もコロナにかかっていない」「本当は新型コロナワクチンなんて不要だ、製薬会社の陰謀だ」というリプ(返信投稿)が山ほど届く。でも、その人たちがワクチンを打たずに元気でいるのは、まわりの大半の人たちがワクチンを打ったことで感染拡大が食い止められ、ウイルスに曝露する確率が低くなったからでしょう。

大勢のワクチン接種という行動によって、感染拡大という悪いことを防いだ、その事実が反ワクの人たちには見えていないわけです。もう少し世の中を俯瞰的に見て「もし世界の誰もワクチンを打たなかったらどうなっていたか」などと考えてみれば、ワクチンの有効性がわかるはずなのに、「“自分は”ワクチンを打たなくても大丈夫だった」という視野狭窄に陥っている。このように自分のことしか見えない、考えられない人は存外に多いという現実を、コロナ禍で改めて思い知りました。

SNSで「現場の声」が可視化されている

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