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「猫派の一条天皇」飼い犬に命じた"恐ろしい処罰" 中宮や清少納言も同情した「翁丸」の悲しい逸話

東洋経済オンライン / 2024年6月22日 10時0分

中宮や清少納言も憐れんだ、飼い犬の翁丸に対する処罰とは。※写真はイメージ(写真:surachetsh / PIXTA)

今年の大河ドラマ『光る君へ』は、紫式部が主人公。主役を吉高由里子さんが務めています。今回は『枕草子』に登場する、一条天皇が寵愛した猫と、犬を巡るエピソードを紹介します。

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一条天皇は猫を寵愛、官位も授ける

清少納言が執筆した『枕草子』には、帝(一条天皇)が寵愛した猫の話が載っています。

【写真】犬の翁丸に同情した清少納言。写真は車折神社の清少納言社。

面白いことに、この猫は、五位の官位までもらい「命婦のおもと(御許)」という名前まで付けられていたのです。命婦は従五位下以上の女官のこと。御許は高貴な女性の敬称です。

そこからこの猫は、女猫であったことがわかります。可愛らしい猫だったということもあり、帝のお気に入りだった「おもと」。おもとには、乳母までおり、この乳母は「馬の命婦」と呼ばれていました。

現代においては、犬などのペットに名前を付け、服を着せたり、病院に連れて行ったり、家族のように接する光景をよく見かけますが、平安時代もある意味、似たような状況だったのです。

さて、ある日のことです。猫のおもとは、縁側でぐっすり寝ていました。それを、おもとのお世話係である馬の命婦が「お行儀が悪い。部屋に入りなさい」と、中に入れようとします。

ところが、おもとは、熟睡しており、うんともすんとも言わない。少し脅かしてやろうと、馬の命婦は、側にいた犬の「翁丸」にこう命じます。「翁丸は、何をしているの。この悪い子の命婦のおもとを噛んでやりなさい」と。

馬の命婦は半分冗談でそう言ったようですが、犬にはそんなことはわかりません。バッとおもとに飛びつきました。するとさすがに猫のおもとはびっくりして飛び起き、慌てて、御簾のなかに逃げ込んでいきました。

ところがちょうどそのとき、帝が朝食の間にいらっしゃったことから、おもとがおびえて走ってくるのを目撃してしまいます。

帝もびっくりされて、可愛い猫のおもとを懐に入れてやります。そのうえで、蔵人(天皇の秘書的役割を果たした官人)をお呼びになりました。すると、すぐに蔵人の源忠隆と「なりなか」という者が御前に参上しました。

配流が決まってしまった犬の翁丸

おもとがおびえて走り込んできた事情をすでにご存じだった帝は、「不届者の翁丸を打ちこらしめたうえに、犬島に流せ。すぐにだ」と彼らに命じました。

帝の怒りは馬の命婦にも及び「おもとのお世話係をほかの者に代えてしまおう。このようなことでは安心できない」とおっしゃったのです。馬の命婦は、帝のお怒りを恐れて、御前に顔も出せない状態でした。

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