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世界最高峰の心臓外科医が留学後に受けた「屈辱」 「白い巨塔」にはびこっていた"排除の力"とは

東洋経済オンライン / 2024年6月23日 19時0分

また、周囲から向けられる目も冷たいのです。「よくわからないよそ者が来た」。ドイツの医師たちは、そんなふうに私を見ていたと思います。初めてボルスト先生の医療チームに加わり、そのやり方を何もわからない私に対して誰も助け船を出してくれませんでした。

私が飛び込んだ世界は、完全なる実力主義社会でした。自分より年上だからとか、先に入ったとかは関係ありません。上手いか、上手くないか。ただそれだけです。

なぜなら、それが患者さんの命を救うことにつながるからです。

おいしくないレストランには行かないでしょう。下手な美容室でわざわざ髪を切ってもらおうとは思わないはずです。どの世界でも同じです。質を確立するためには、量しかありません。「量のない質」はありえません。ただの幻想です。

帰国後に告げられた「忘れられない言葉」

成果を上げているのに、周囲から評価されない。自分のほうがうまくやれているのに、認められない。「実力主義」とはかけ離れたところで、実力を発揮するチャンスを妨げられる―。

これらは病院に限らずどの業界でもあることかもしれませんが、当事者にとってはつらいことです。

留学先のドイツから日本へ帰国したときの話です。

ドイツで学んだことを、日本の医療に活かしたい。患者さんたちのために、よりよい手術を実践していきたい。そう強く決意し、帰国したのにもかかわらず、「君の居場所は、ここ(金沢大学)にはないよ」と言われ、金沢大学の医局から富山医科薬科大学への異動を命じられました。

留学中に私が上げた成果は、喜ばれることなく逆に妬まれ、排除の力が働いたようでした。寂しさを感じました。と同時に、実力主義であるドイツとはかけ離れた日本の現状を憂い、「なんとかしなければいけない」とも思いました。

医療は、患者さんたちのためにあるべきです。医者のためでも、ましてや医者たちの政治のもとにあるわけでもありません。優れた医療こそが、トップ・プライオリティでなければいけないのです。

ただ、若い医者がひとりで声を張り上げたところで、何も動かせません。それが現実で、組織内で力を持つことも必要なことも知りました。

もしみなさんがいま、思うような評価を周りから得ていないと感じたり、いくらがんばっても何も変わらない状況が続いていたとしましょう。そんなとき、どうするべきか?

理不尽だと感じても会社の方針に従い、悔しさを忘れることに努め仕事に従事する。あるいは「やってられるか!」と啖呵を切って会社を辞める。

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