人類が遠い惑星に住むための独創的なアイデア どうすれば人間が居住可能な世界にできるのか
東洋経済オンライン / 2024年6月24日 15時0分
そうすると、エアロゲルの下の凍結した土壌に可視光が吸収されて生じた熱が閉じ込められ、土壌が暖まり、内部に凍結されていた気体を蒸発させることができるというのである。
独創的な人々は独創的なアイデアを思いつくものだ。だが、この方法に現実味はあるのだろうか? 理論的にはある。だが実際にうまくいくかどうかは、封じ込められている二酸化炭素の量と、そのうち解放できるのは何%ぐらいかにかかっており、この点に関して、さまざまな文献が挙げているデータには一貫性がない。
別の惑星を地球のように変貌させるには、最初にそこに行くためにミッションを開始するのと同じくらいの努力が必要になるはずだということに注意してほしい。
惑星は非常に大きく、その大気では複雑な物理現象が起こっており、惑星をその現状から望みのゴールである「第2の地球」まで変貌させるのに必要な一連のステップを決めるとなると、それは惑星ごとにまったく違うものになるだろう。
惑星丸々1つを変化させるのはハードルが高すぎるなら、もっと小さい衛星を居住可能にすればいいかもしれない。
現在の数十億人からなおも急増を続ける地球上の人間を住まわせるのに地球の全面積が必要なわけではないことを心に留めておいてほしい。地球の表面の約70%は水であり、陸地は約1億5000万平方キロメートルだが、陸地の3分の1は砂漠だ。
比較のために申し上げると、月の表面は、水と呼べるものは存在しないが、約3700万平方キロメートルの面積がある――1万人程度の乗組員が「家」と呼ぶに十分な広さだ。
もちろん、これにはさまざまな問題がある。大抵の衛星の表面重力は惑星に比べて極端に小さいので、大気を作ったとしても徐々に宇宙に漏れていくはずだというのも、特に重要な問題の1つだ。
より現実的な「シェルワールド」
これに対処するというのが「シェルワールド」である。工学者のケネス・ロイが提案したシェルワールドは、ベースは普通の小さな衛星なのだが、グラフェン、またはケブラーと鋼鉄の組み合わせなどの比較的単純な素材でできた保護用シェルにすっぽり包まれている。シェル内部では、地球のような大気と生物圏を作り、それを維持することができる。
ロイの計算によれば、火星の大きさをしたシェルは地球の大気の約7%の質量しか必要なく、紫外線と太陽放射からしっかり守ってくれて、おまけに、比較的少量の原材料から短期間で製作できる。それでもやはり、実際に作るのは技術的に非常に困難だろうが、他の方法に比べればはるかに現実的だろう。
(翻訳:吉田三知世)
レス・ジョンソン:物理学者、NASAテクノロジスト
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