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日産、「旧ケイレツ」を救済せざるをえない事情 経営危機の河西工業に60億円出資の舞台裏

東洋経済オンライン / 2024年6月24日 9時30分

神奈川県寒川町にある河西工業の本社。ゴーン改革による「系列解体」で日産自動車は保有株を手放したが、今回の救済スキームで再び日産が筆頭株主に(編集部撮影)

かつての「ケイレツ」を救済する日産自動車の狙いはどこにあるのか?

【グラフで見る】苦戦する河西工業。3期連続で赤字に沈む

5月9日、日産は主要サプライヤーの1社である河西工業に対して60億円の出資を行うと発表した。河西工業が6月27日に開催する株主総会での承認を経た後、第三者割当で発行する優先株式を引き受ける。この優先株には普通株と同等の議決権が与えられており、日産は議決権ベースで13%を握る筆頭株主になる。

ゴーン「系列解体」で資本関係は解消

河西工業は、主に日産向けにドアトリムなどの内装部品を製造・販売する老舗の名門サプライヤーで、2000年代初頭までは日産が約2割の株を持つ筆頭株主だった。カルロス・ゴーン氏による「系列解体」の結果、日産との資本関係はなくなったが、深い取引関係は継続している。

その河西工業が深刻な経営危機に陥っている。日産の拡大戦略に応じて海外での生産能力を増強してきたが、日産の販売台数がピーク時の577万台(2017年度)から344万台(2023年度)まで4割も減少したことが大きな打撃となった。2023年3月期まで4期連続で最終赤字を計上。財務の健全性を示す自己資本比率は42.9%(2019年3月期)から7.7%(2023年3月期)に悪化した。

2022年5月と9月に総額約378億円のシンジケートローンやコミットメントライン契約を締結するなどした結果、有利子負債は700億円規模まで膨張。業績と財務の悪化によってたびたび財務制限条項(コベナンツ)に抵触し、債務の一括返済を迫られかねない状態に陥った。

2022年11月以降、河西工業は事業会社28社、ファンド21社のスポンサー候補に支援を求めたが、いずれも「借入金が過大で検討は難しい」と断られた。最大の取引先である日産にスポンサー支援を要請し、2024年1月末には再建へ向けた意向証明書が日産から提出された。

その後、河西工業、日産、銀行団の間で、水面下の協議が続いていた。ようやくまとまった再建計画の一環が、今回の日産による出資である。同時にメインバンクのりそな銀行からの借入金176億円のうち60億円を自己資本として認識される資本性劣後ローンへと転換する「デット・デット・スワップ(DDS)」も実施することによって、財務体質の改善につなげる。

ある日産系サプライヤー幹部は今回の日産の支援を「異例の救済劇」と評した。というのも、日産は特定の取引先を支援することに慎重な姿勢を示し続けていたためだ。2022年には、日産系の自動車部品大手マレリホールディングス(旧カルソニックカンセイ)が経営破綻したが、日産は直接の支援を行わなかった。

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