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「成瀬あかり」は現実のM–1でどこまで通用するか M-1創設者が驚愕する「成瀬本」の深いM–1描写

東洋経済オンライン / 2024年6月26日 15時0分

都内にある滋賀県のアンテナショップ「ここ滋賀」の外観は、『成瀬は天下を取りにいく』一色だ(写真:編集部撮影)

小説『成瀬は天下を取りにいく』が昨年人気となり、今年、シリーズ続編『成瀬は信じた道をいく』が出版された。この小説では、主人公の成瀬あかりが漫才コンテスト「M–1グランプリ」に挑む場面が物語の1つの核をなしている。

元吉本興業でM–1創設者の谷良一氏が、「成瀬」シリーズに刮目した理由とは。

滋賀の女の子が突然、「M–1」に挑戦

今大注目のある小説のおかげで、M–1が新たな層から脚光を浴びている。それが、『成瀬は天下を取りにいく』と『成瀬は信じた道をいく』である。

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この小説の主人公、成瀬あかりは滋賀県大津市に住む女の子だ。

子どもの頃から強い意志の持ち主で、思ったことはことごとく実現していく。人からどう思われるとか、こういうことを言ったりしたりすると嫌われるなどということは一切忖度しない。唯一といっていい親友の島崎みゆきは、ことあるごとに成瀬に振り回され、そのくせいつの間にか成瀬と一緒に行動をするようになり、それを楽しく感じるようになってしまう。

次々に希望を実現していく成瀬だが、ある日突然、「M–1に出よう」と言い出し、島崎と「ゼゼカラ」というコンビを組んでM–1に挑戦する。

M–1を立ち上げたぼくから見て、成瀬本におけるM–1の取り上げ方はあまりにも的確だ。ぼくが目を見張った点を3つ書いてみたい。

まず第1に、何事にも習熟の早い成瀬は漫才のネタづくりでも非凡なものを見せる。成瀬の書いたネタがなかなかサマになっているのだ。

ゼゼカラは漫才及びM–1を知るために、神回と言われた2004年のM–1のビデオを見て研究することから始める。次にネタづくりに入り、「野球ネタ」、そして「200歳までの人生設計ネタ」をつくる。その次にはアンタッチャブルのM–1ネタをコピーして「琵琶湖上にデパートを建てるネタ」を生み出す。ここまでくるとかなり完成している。

琵琶湖上のデパートのネタは漫才の基本を踏襲しているので、きっちり稽古してふたりの息と間を合わせれば、予選1回戦は突破できるのではないか。あるいは逆に、高校生らしい元気さと素人っぽさを思いっきり前面に出してやれば、審査員は残してくれるに違いない。ナイスアマチュア賞を取れるかも。

こうしてできたネタを文化祭で披露したあと、いよいよM–1に出場する。

実際に見た人にしか描けない予選のリアル

次にすごいのは、M–1の予選の雰囲気がすごくリアルに描かれている点だ。

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