なぜ大人は若者に「合わせる」ようになったのか 成熟という価値観を喪ったデオドラント化社会
東洋経済オンライン / 2024年6月26日 11時0分
若者と接する場面では、「なぜそんな行動をとるのか」「なぜそんな受け取り方をするのか」など理解しがたいことが多々起きる。
企業組織を研究する経営学者の舟津昌平氏は、新刊『Z世代化する社会』の中で、それは単に若者が悪いとかおかしいという問題ではなく、もっと違う原因――たとえば入社までを過ごす学校や大学の在り方、就活や会社をはじめビジネスの在り方、そして社会の在り方が影響した結果であると主張する。
本記事では、著者の舟津昌平氏と歴史評論家の與那覇潤氏が、Z世代を通して見えてくる社会の構造について論じ合う。
もてはやされ、忘れられる若者
舟津:本書では、Z世代を読み解くテーマの1つとして「就活システム」を論じており、就活の早期化やインターンシップ、内定後の研修などへの疑問を投げかけました。周りの教員の中にはこうした問題をうまく乗り切っている方もいれば、問題にぶつかっている方もおり、そして少なくない方が問題を「そんなもんだ」と受け入れてしまっています。実践的な解決法として「無視する」、つまり見ないことにして放っておくことは多いんです。実際のところ、就活システムをとやかく論じるのは別に大学教員の仕事ではありませんし。
でも私は、もっと根本的な原因や背景を考察したいと考えていました。若者をめぐる違和感や疑問について本にまとめて、建設的な意見を提供できれば、と思ったんです。そう思ったきっかけに、與那覇先生の「デオドラント化(=少しでも不快に感じたら排除し、無臭化する社会)」という概念を扱った記事をはじめ、先生の論考との出会いがありました。
與那覇:本書で言及を見つけたときはとても嬉しく、応答するnoteを書かせていただきました。改めてありがとうございます。
舟津:特に印象に残ったのは、「歴史を忘れた日本(人)」というフレーズです。そこから、自分が抱いた違和感や経験をきちんと振り返って形に残し、「歴史」の一部として示すことで、多くの人に共有したいと思いました。就活システムの歪みや不備を学生も感じているのに、生き残るために仕方なくそのシステムに従っています。異論をはさむよりも黙ってやったほうが楽だ、という空気もあるんです。でも、私はそういった違和感を言葉にして発信することで、少しでも建設的な議論ができればと思っています。
與那覇:まさに必要なことですよね。とりわけ本書の優れた点は、著者の舟津さん自身がふだん教えている学生たち、つまりZ世代に対して感じる「違和感」を大事にしていることだと思います。いまZ世代と銘打つ本は「彼らに共感・期待」みたいなものが多く、年長者が「私はまだまだ若い世代と同じ!」とPRするツールになっていると感じていたので。
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