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なぜ大人は若者に「合わせる」ようになったのか 成熟という価値観を喪ったデオドラント化社会

東洋経済オンライン / 2024年6月26日 11時0分

舟津:今聞いていて思ったのが、おかゆ。胃腸にやさしいおかゆだけ食べ続けると、胃腸はむしろ弱くなるという説があります。そう考えると、今の社会ってみんなおかゆばかり食べている状態で、栄養のあるものを体が受けつけなくなっている感じがします。マッサージもまさに同じで、こってるからマッサージを受けるわけですが、ずっと受け続けたらどうなるんでしょう。

與那覇:言い得て妙ですね(笑)。また別の比喩で言うなら「免疫」でしょうか。ある程度、異物にさらされてきたからこそ、本人の中で対応し無害にする力が身につくわけで。

先日までのコロナ禍でも、多くの人が「感染自体をゼロにすべき」と思い込みがちでした。でも、それは現実的に無理なんですよ。ウイルスそれ自体を追い出すのではなく、その有毒さを下げることを目標にするしかなかった。

舟津:本当ですね。ワクチンのように弱毒化して受け入れるしかないものを、ゼロにしようとするのは無理があります。

ビジネスがフル活用する「消えた感」

與那覇:ダイバーシティなる標語がよく口にされますが、多様性のある世の中とは、完全にはデオドラントすることが「できない」社会ということです。変わり者も、意見が異なる人も、面倒くさいやつもいる。自分の観点では「悪いやつ」としか思えない相手もいる。

そうした不純でややこしい空間を、殴りあい抜きでみんなが一緒に居られるよう調停する人が、かつては「成熟した存在」だと評価されていました。ところが国家権力なり、プラットフォームによる規制なり、ネット炎上的なポピュリズムなりでデオドラントして異分子を抹消すれば、「成熟の有無なんてもう関係ないんだ」と錯覚する人が増えた。そうした思い込みが、いろんなことをおかしくしていますよね。

舟津:「デオドラント化」といっても、一瞬「消えた感」がするだけで、生き物は無臭になりませんよね。ゆえに、永遠に満足できずに臭いを消し続けることになります。そしてビジネスは、そうした不満を容赦なく利用してくる。

與那覇:まさしく、ゼロコロナが幻想だったのと同じですよね。「ゼロにしよう!」と煽ればビジネスになる業界があるだけで、実際にはゼロにならない。

舟津:本当におっしゃるとおりです。消毒液だけが無限に売れて消費されても、実際に毒がなくなるわけではありません。消毒液は消毒には有効ですけど、もちろん万能ではないし、社会を無毒にすることはできませんから。

與那覇 潤:評論家

舟津 昌平:経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師

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