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僕が面接で「超優秀な学生」を見抜けなかった後悔 就活生に教わった「社会人として最強の能力」

東洋経済オンライン / 2024年6月27日 8時0分

彼の仕事は、お客さんである銀行にさまざまな金融商品を売ることだった。金融商品を組成したり値付けしたりするのが僕らトレーダーの仕事だったため、彼と関わることが多かった。

営業マンは商品に詳しくなければいけないが、彼は飲み込みが遅かった。特に僕が扱うデリバティブ商品は複雑で、なかなか理解してもらえなかった。「100%の確率で6を出せます」という自信は、やはり口先だけのものだったのか。

そんなある日、彼のお客さんであるメガバンクと大きな取引をすることになった。しかし、彼は泣きそうな声で「自信ないっす」と言う。

さて、困った。

ミスがあれば、お客さんが怒るかもしれないし、取引で大損するかもしれない。心配になった僕は、彼とお客さんの通話に乗って、そのやりとりを聞くことにした。

そこで、ようやく理解したのだ。彼が「必ず6を出せる」と言っていた本当の意味が。

電話の向こうのお客さんも彼とのやり取りに不安を感じていた。そして、こんな提案をしてきた。

「〇〇君、取引内容わかる? 難しそうなら僕がトレーダーと話そうか?」

驚いた。通常あり得ない会話だ。

相手はメガバンクの担当者。半沢直樹のような厳しい世界だ。ところが、そのお客さんは直接トレーダーと話そうと気遣ってくれている。それだけ彼が愛されていたのだ。よく考えてみると僕も同じだった。僕も彼を気遣って電話に出ていた。

いつもの僕なら、物分かりの悪い人には厳しい。彼の上司に文句を言って、担当を変えさせたかもしれない。

だけどそうはならなかったのは、彼を応援したかったからだ。彼は、仕事熱心で、誠実で、魅力的な人間だった。僕やお客さんがサポートしたように、これまでも彼は周りを巻き込んで成功してきた。その意味で、彼のサイコロは全面6だった。

最近、彼と社会学者の宮台真司氏と3人で鼎談したことがあった。そのとき、宮台さんは彼のそのエピソードを絶賛された。

「英語ができないなら、英語ができる仲間がいればいいんです」

仲間を作る力こそが、生きていく上で大事な能力だとおっしゃっていた。

現代社会においては、お金を稼ぐために、僕らにはさまざまな能力や知識が求められる。英語などの言語能力、論理的思考力、伝える力、金融リテラシーに情報リテラシー。昔に比べると学校で学ぶ範囲は広がっている。これからはAIを使いこなせる力も必要になるだろう。

すべて1人でこなすのは大変だが、彼のように苦手なことを仲間に頼るという選択肢もある。ビジネスでもなんでも、成功している人たちのほとんどは、仲間作りが上手い人に思える。何かの能力がずば抜けて高いことで成功している人もいるが、それはほんの一握りだ。

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