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市民ランナーの心とらえる「サブ4の魔力」の正体 「ギリギリ4時間以内」のゴールがもっとも多い

東洋経済オンライン / 2024年6月28日 18時0分

1つ目の作戦は、ペースを逆算することです。サブ4を達成するためには1km を5分40秒のペースで走ることが求められますが、スタートからこのペースをキープするランナーが多いそうです。

2つ目の作戦は、ラストスパートを頑張るという、驚くべきシンプルなものでした。40km 地点でサブ4ペースを下回っている選手は、残りの2.195km のペースが急激に早くなることが示されました。

つまり、最後に歯を食いしばってサブ4を達成するランナーが多いということです。キリのいい目標があることで、終盤のパフォーマンスが高まるというのは、興味深い結果です。

以上のとおり、アレンたちはマラソンランナーに概数効果がみられること、キリのいい記録を達成するために意思決定が変化することを示しました。

さらに、この概数効果は、大会の時期・規模・ランナーの年齢・カテゴリ・ペースメーカーの有無にかかわらず、みられることも主張しています。

アレンたちは、一流ランナーでもこの概数効果がみられると示しています。つまり、トッププロのランナーでも、キリのいい目標があることでそれをクリアするためにペースを組み立てたり、スパートを調整したりする可能性が考えられます。

逆にいえば、キリのいい目標がない場合は、記録を狙うインセンティブ(やる気やモチベーション)が落ちて、順位を競うことに注力しがちになるとも考えることができるでしょう。

男子マラソンの記録停滞と「2時間5分」の大台

ここで思い出すのは、男子マラソンの日本記録です。

男子マラソンの日本記録は、2002年に高岡寿成が2時間6分16秒を樹立してから、2018年に設楽悠太が5秒更新するまで16年間更新されませんでした。

その間に世界記録は4分も早くなっていることを考えると、世界と大きく突き放されてしまったのです。練習法や道具が進化しているにもかかわらず、記録が更新されなかったのは不自然にも思えます。

マラソンは2時間5分が1つの壁といわれており、(2021年に鈴木健吾がクリアするまで)日本人には難しいと考えられていました。

大台の2時間5分台(キリのいい目標)を狙うのは難しいため、記録よりは順位狙いの走りになっていた可能性が考えられます。

男子マラソンの停滞を概数効果のみで説明しようとするのはさすがに無理がありますが、停滞の背景には何らかの意思決定(目標タイムやペース配分)の歪みがあったと考えるのが妥当でしょう。

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