カニ山盛り「2時間1万2000円」ブッフェの破壊力 コロナ禍で怒涛の出店をした企業の正体
東洋経済オンライン / 2024年6月28日 8時50分
「円安に加えて、食材もいいものを使っているので、飛行機代を勘案してもここで食べたほうがお得、と。中国や欧米の人の中には、『向こうで食べるより安い』とリピートするお客様がいます」(孫社長)
中国・河南省出身の孫社長が来日したのは2002年、18歳のとき。「日本の歌手やアニメが好きで、特に浜崎あゆみのファンだった」彼女は、日本語学校に学んだ後に短大、大学に進み、マーケティングや情報メディア論などを学んだ。
卒業後、中国系の企業に就職し通訳・翻訳の仕事に従事する。ところが「これが私のやりたいことではない」と気づく。街の小さな飲食店を経営していた両親のもとで生まれ育ち、子どもの頃から店を手伝っていた。来日してからも居酒屋でアルバイトするほど、彼女にとって飲食店は身近な存在だった。そこで経験はないながらも、自身の店を開くことを決める。
「半年間は自分の人件費すら出せなかった」
当初から狙いを定めていたエリアは銀座だ。会社員時代に接待などで利用し、多少の土地勘があった。そして孫氏には、ある勝算があった。
「銀座の老舗のお店に行くと、1回の食事で最低でも2万、3万円はします。でも一般的なサラリーマンにとっては高すぎる。高級感があって、それでいて1万円程度で楽しめる『お得感のある高級店』があればはやるのでは、と考えました」
開業に向け、理想の物件を探し回るが、「外国人だから」との理由で不動産業者やオーナーから物件の契約を何度も断られてしまうこともあった。契約に至るまでは1年を要した。銀行も、外国人で飲食店の実績のない孫社長が借り入れるのは容易ではなく、自らの貯金と、両親、友人に借金して3000万円を調達した。
こうして2014年1月、念願のレストラン「中国料理 GINZA芳園」をオープンする。
「半年間は利益が出ず、私の人件費も出せなかったほど」と苦笑するが、それでも「お得感のある高級中華料理店」の評判が徐々に広まり、テレビや雑誌でも採り上げられるように。平日にはサラリーマン、休日には主婦層や家族連れが切れ目なく来店する繁盛店になっていく。
「GINZA芳園」をヒットさせた孫氏のもとに、今度は不動産業者のほうから物件の相談が舞い込んできた。場所は銀座7丁目。立地を考えるとかなり破格の条件だった。「サラリーマンが飲み会で使える予算は高くて5000円くらい。それくらいの価格帯のお店を銀座で出せたら面白いのでは、と考えました」。
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