カニ山盛り「2時間1万2000円」ブッフェの破壊力 コロナ禍で怒涛の出店をした企業の正体
東洋経済オンライン / 2024年6月28日 8時50分
そのアイデアをもとに2016年8月、2店舗目の「創作中華料理 銀座夜市」をオープン。北京ダックも含む本格中華が食べ放題・飲み放題付きで5000円(現在は5980円)。これも孫氏の見立てどおり、近隣に勤めるサラリーマンの支持を得てヒットした。
その後も「本格料理をリーズナブルな価格で」のコンセプトを軸に、4店舗まで数を増やすが、その行く手を阻んだのが2020年の新型コロナウイルス禍だ。孫社長の経営する店舗も打撃を受け、4店舗中2店舗を閉店。「コロナが明けるまで静観していよう」と思っていた矢先、不動産業者から「1年間、賃料は無料でいいから借りてくれないか」と新橋の物件の相談が舞い込んだ。
そこで、2022年3月にオープンしたのが、「60分・500円で卓上ハイボール&レモンサワー飲み放題」というユニークな業態の「乾杯500酒場」。これが新橋のサラリーマンにウケた。
そこから攻勢に転じる。コロナ禍で増加した空き物件を好条件で借り受け、神田、船橋には「乾杯500酒場」、上野には日本初上陸の火鍋専門店「孫二娘潮汕牛肉火鍋」を出店した。一方で、高田馬場では留学生をターゲットとしたガチ中華の店も展開。「そこはいわゆる中国のB級グルメを持ってきて、本場の味を再現して留学生たちの胃袋をつかんでいます」。
「コロナ禍の時期は競争相手も少なく、賃料の相談がしやすかったんです」と孫社長。「オーナーもB工事(借主が工事費を負担)ではなくA工事(貸主が工事費を負担)にしてくれるなど、最大限に譲歩してくれました」。
ヒットを連発する3つの秘訣
次々にヒットを連発する経営術の秘訣は、大きく3つある。
1つ目は孫社長自身、「最も重視している」と語る、業態と立地のマッチングだ。物件の周辺には自ら何度も足を運び、既存店の客単価、訪れる客層、人の流れなどに目を凝らす。その客層に応じて、サラリーマン向けには「5000円の食べ放題」、学生向けには「1000円前後のB級グルメ」などと店舗のコンセプトを決めていく。
「いつも日常生活や旅先で新しいメニューを見ると『これを採り入れられないかな』『あの場所でオープンしたらはやるかな』とつねにアイデアを考えています。そういうのが好きなんですよね」と語る孫社長の頭の中にはいくつものアイデアがあるのだろう。
2つ目は「日本人の味覚や嗜好に合わせてメニューを提供する」こと。孫社長が経営する店舗は本格的な「ガチ中華」が中心だが、本場のメニューをそのまま日本に持ち込むわけではない。例えば火鍋専門店「孫二娘潮汕牛肉火鍋」は、牛骨で煮込んだスープを使用。日本人の嗜好に合わせて辛さを抑え、素材の味をそのまま楽しめるようアレンジしている。
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