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「藤井聡太を"人間"にした男」伊藤匠の背負う宿命 「同世代棋士が無敵の王者を破ったこと」の意味

東洋経済オンライン / 2024年6月29日 14時0分

将棋も精神的な格闘技であることは間違いないですから、負けてガクッときて、そのまま挫けてしまうこともあれば、いろんな要素で勝とうという気持ちが出てこない場合もある。でも藤井さんも羽生さんも、つねに勝とうという意思が桁外れなんです。将棋界で随一のタフでラフは、この2人に尽きると思います」

自ら陽の光の当たる場所へと出た

かつて文筆家としても活躍した棋士の故・河口俊彦八段は、「僅差だけども永久に勝てない将棋と、大差だけれども逆転する可能性の将棋がある」と書いている。

藤井の将棋の形勢をAIが表す評価値は、緩やかに登り続け、大きな波を迎えることなく終局、勝利へと向かうことが多い。“藤井曲線”と呼ばれるその線は、河口の言葉にあるように、永久に逆転が起きないことを思わせる。これまでトップ棋士が挑んだタイトル戦で、そのような光景を幾度も目にしてきた。

伊藤は藤井の背中をずっと追い続けてきた。2人の距離は“藤井曲線”のように、たとえ僅差であっても、入れ替わることがないように感じられた。だが、巨大な枝葉の影にいた男は、力ずくでその枝を登り、自ら陽の光の当たる場所へと出たのだ。

中学時代には環境に馴染めずに不登校を経験し、進学した高校は将棋の勉強のために1カ月で退学を決めた。学校で友達を作ることもなく孤独な中でも、将棋の勉強を止めた日はなかった。自分を引っ張っているのが、藤井の存在であることにも気づいていた。

これから2人は、大舞台で幾度も戦っていくことになるだろう。伊藤はタイトルを獲った今も、変わることなく将棋漬けの日々を送っている。

野澤 亘伸:カメラマン/『師弟~棋士たち魂の伝承』著者

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