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「現金で変わった」パプアニューギニアの食風景 「イモより米が食べたい」と人々が語る背景

東洋経済オンライン / 2024年6月30日 12時0分

パプアニューギニアの家庭にて、家の外の"台所"(筆者撮影)

あるときはキューバの家庭の台所に立ち、またあるときはブルガリアでヨーグルト料理を探究して牧場へ向かう。訪れた国と地域は25︎以上、滞在した家庭は150以上。世界各地の家庭を巡りながら一緒に料理をし、その土地の食を通じて社会や暮らしに迫る「世界の台所探検家」の岡根谷実里さん。今回はパプアニューギニアの台所からお届けします。

3種類の主食と、米の特別感

パプアニューギニアを訪れたのは、2023年の秋だった。十数年以上越しの念願叶っての訪問で、期待で胸がはちきれそうになっていた。高校地理の授業での「サゴヤシというヤシのでんぷんを主食にする人たちがいます」という話がなぜか心に残り、ずっと行きたかったのだ。

【写真】;パプアニューギニアの家庭で出してくれたサゴヤシ団子。この日は青菜と一緒に買ったチキンも煮た

ところが、治安とアクセスの悪さから、つてのない人間が気軽に行くことが困難な土地。ずっと片想いだった。それがついに、文化人類学者の調査に同行させてもらう形で訪問が叶った。

行ってみたらサゴヤシ以上に変わりゆく主食の風景が気になった。特に、その中で、ちらっちらっと登場する現金の存在。滞在後半はずっとお金のことを考えていた。現金は、いかに社会を変えるのだろうか。今回は「現金の食」について書きたい。

ここは、パプアニューギニアの北部、東セピック州の村だ。国内線専用空港のあるウェワクから、山道を4輪駆動車で5時間ほど。乗合バスは安全面からやめとけと言われ、村から迎えに来てくれた男性たちの運転で、借りた車で上っていく。ガタガタの山道は、普段車酔いしない私でもきつく、「これは寝るしかない」と目を閉じた。

到着したら、女性たちが出てきて首に花飾りをかけて歓迎してくれた。私たちが寝泊まりする部屋の入り口にも花飾り。「DOZO YORO SHIKU」なんてどこで調べたのか書いた札まで貼ってある。治安とか強盗とか心配していた全身の力が抜けた。

この日の夕飯は、サゴヤシのでんぷんをお湯で練って、ぷるぷるのサゴヤシ団子作ってくれた。味がほぼないのは驚いたが、ココナツミルクで煮た青菜をのせて食べるとつるりと食べられて心地よい。

その翌日はイモ。家の畑でとれたタロイモとヤムイモとプランテン(甘くないバナナ)を何種類かごちゃ混ぜに鍋に入れ、ココナツミルクと水で煮て、青菜を煮たのをのせて食べる。

イモもプランテンもガーデン(ピジン語で畑の意)でとれるカイカイ(食べ物)なので、ガーデンカイカイと呼ぶのだが、ガーデンカイカイはお腹に溜まる。日本のジャガイモや里芋のようにしっとり甘く溶けゆくものではなく、ごわごわのでんぷん質で、八つ頭を3倍濃くした感じ。即時の甘味はないけれど、ゆっくりと滲み出る味わいで、イモ好きにはぐっとくる。体を作るもとになる主食とはこういうものだろう。

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