元3セク社長が指摘「赤字ローカル鉄道の処方箋」 「日本鉄道マーケティング」の山田氏に聞く
東洋経済オンライン / 2024年7月1日 7時30分
かつて若桜鉄道の公募社長を務め、その後は津エアポートラインや近江鉄道でも利用客拡大に手腕を発揮した山田和昭氏が4月から自身が代表を務める「日本鉄道マーケティング」で地域公共交通の支援に動き始めた。これまでも2016年10月22日付記事(鳥取「弱小鉄道」を救ったIT出身社長の手腕)、2019年2月2日付記事(若桜鉄道の社長はなぜ「船会社」に転職したか)で山田氏にインタビューしているが、あらためて地方鉄道が抱えている課題や、それをどう改善しようとしているかについて聞いた。
お互いを知らない鉄道と行政
――赤字ローカル線の問題とは?
【写真】「鉄道と行政がお互いの事情を知らない」と指摘する元・若桜鉄道社長の山田和昭氏とは?
地域のまちづくりや経済活動と鉄道のサービスがマッチしておらず、それが地域の衰退や鉄道の存続問題につながっているように見えます。
――意思疎通ができない?
まず、鉄道と行政がお互いの事情を知らないことが挙げられます。鉄道は安全を守りながら、リアルタイムでお客様と向き合う必要がありますし、鉄道移動は派生需要ですから駅周辺の人口や就業者・就学者数といったまちづくりに左右され、自社の努力で利用を増やすには限界があります。
また、使う言葉も変わります。たとえば「予算」は、鉄道事業者であれば収益に対して投入する投資的な意味に対し、行政の場合は議会で認められた物事のみに税金を使うというまったく異なる意味になります。
――第3セクター鉄道なら社長や幹部社員には行政出身者もいるが、それでも意思疎通が難しい?
確かに3セクの社長は行政出身者が多いですが、現場の状況を理解し説明するのが難しい。そして、「こうなんですよ」と説明しても、「それは我慢してください」で終わってしまうことも多いのです。
本来は地域の利便性を高めて、地域の経済を回すために鉄道というインフラがあるはずなのですが、運輸収入が減少すると行政は鉄道を維持存続させる負担を減らしたいがために経費を減らす。そうすると鉄道の利便性が落ち、地域全体に負の影響がのしかかります。そこが議論に上がりづらいのです。
地域鉄道は人員をギリギリに削っているので、地域連携や企画に人を割きづらく、交通政策の所管部局は商工振興、観光、都市計画などの部局と連携する必要があるのですが、行政組織のルールや慣習ではこれが難しいのです。そして鉄道が衰退して地域も衰退するという負のスパイラルに陥りがちです。もちろん、役割が終わっていて生かしようもないという鉄道路線は、撤退も考えるべきです。しかし、現状では鉄道を生かせるのに生かしていない路線が多いと見ています。
なぜ「公募社長」になったのか
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