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元3セク社長が指摘「赤字ローカル鉄道の処方箋」 「日本鉄道マーケティング」の山田氏に聞く

東洋経済オンライン / 2024年7月1日 7時30分

1500円で実現させた「観光列車」

――公募社長になって最初に手を付けたことは?

普通の列車にガイドさんを乗せて「若桜谷観光号」という観光列車として走らせました。2つ目の鉄道の利便性を高めてベッドタウン化するという作戦の実行には設備投資が必要ですが、調査して計画を作って予算化して建設するという長い時間がかかる。これは長期的な観点で進めることにして、すぐできることが観光列車でした。

わざわざ車両を造らなくても、ガイドの人件費だけで始めることができる。列車に名前を付けるだけで、時刻表に載るし、駅で出発するときも「若桜谷観光号」と案内される。そうすると、地元の人も「ただの生活路線ではなく、観光できる場所もあるんだ」なり、無料で宣伝できる。ガイドの人件費は補助金を使ったので、費用は1500円だけでした。

――1500円?

列車の行先表示板の作成費用です。直通しているJR鳥取駅で出発式をやりたいとJRに打診したら、「ちょうどその日は駅前活性化のためのイベントをやっていてタレントさんも来ているから、その人に出発合図をしてもらおう」という話になり、今度は県庁に電話して、「若桜谷を活性化する観光列車の出発式で、タレントさんが出発合図をしてくれるのですが、知事はテープカットに来てくれますか」と聞いたら「行きます」と。そして、町に電話して「知事がテープカットするのですが町長は来ますか」と。知事と町長がテープカットするという絵ができたので、テレビ局も取材に来て無料で宣伝ができました。

翌年はSL走行社会実験をやって全国的な話題となり、その年に作られた町の地方創生総合戦略に「鉄道を核とした魅力づくり」という方針が盛り込まれ、新しい観光車両と増発への設備投資がされることになりました。

近江鉄道「全線無料」のインパクト

――若桜鉄道の後は?

公募社長をやって思ったのは、自分は選挙で選ばれたわけでもないし、行政組織がバックにいるわけでもなく、この仕事を個人でやるのは限界があるということでした。そこで、岡山県を中心に各地で交通・運輸関連の事業を行っている両備ホールディングスに入り、同社系列の津エアポートラインを担当しました。最初はマーケティング担当でしたが、その後オペレーション全般を見ることになりました。

――その後、西武鉄道グループの近江鉄道に移りました。

近江鉄道の沿線は工業地帯で人口は50万人もおられ、若桜鉄道とは状況がまったく異なりました。近江鉄道では地域との連携を重視し、駅の掃除や動画作りなどを地域の方々と行うみらいファクトリーを実施していました。

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